三日ぶりの晴れもよう | ナノ
#三日ぶりの晴れもよう


三日三晩降り続いた雨はすっかり止み、吸い込まれるような青空が広がり、おひさまがさんさんと照っている。
ティールは、自室の窓を全開にして、青空を見上げて深呼吸をした。

「いいお天気だね。雨の日も好きだけど、晴れの日も好きだなぁ」

んっと背伸びをしながらそう言うと、同室の住人がケロケロとこたえた。

「ボクはかえるだから、やっぱり雨の日の方が好きだケロ」

ティールは、かえるくんの言葉にくすっと笑ってうなづいた。

「そうだね、わたしもかえるの時はそうだったよ。あっ―…」

窓の外に見知った人影を見つけたので、手を振りながら大きな声であいさつをした。

「ラケル〜ッ!おはようッ!!」

頭上から声が聞こえたので、ラケルはあわてて声のする方を見上げた。
笑顔で、ブンブンと手を振っているティールがいる。
朝から元気いっぱいなティールの姿に、ラケルは笑みをこぼして言った。

「おはよう、ティール」

「今行くから、ちょっと待っててね!」

ティールは窓をバタンと閉めると、用意しておいたバスケットを手にし、かえるくんにいってきますと告げた。
部屋を出て鍵をかけ、パタパタと階段を駆けおりていくと、

「よう、おはよう!朝からティールに会えるなんて、今日のオレはついてるぜッ!」

酒場の常連客の赤髪の男が、二階から降りてきたティールの姿を見て、顔を赤らめながらいつもの挨拶をした。
以前はクエストの情報が目当てで通っていた酒場だが、今では酒場の手伝いをするティールの方が目当てで、クエストの情報は二の次となっている。

「おはよう、アルター!今日は良いお天気ね」

ふんわりと微笑むティールに、アルターはますます顔を赤くした。

「ああッ!今日は冒険日和だ!ウデが鳴るぜ!!」

「今日は冒険に行くの?」

「冒険というか、隣街に荷物を届けるための用心棒だ。最近盗賊団のやつがうろついていやがるからな。ま…、やつらが出てきても、オレのキューキョクの技、アルタースラッシュでコテンパンにしてやるけどな!」

わははっと、得意気にアルターは笑った。

「うん、そうだね!…でも気を付けてね、アルター」

「おう。…ティールはどこか行くのか?」

アルターの質問に、ティールは嬉しそうに笑ってこたえた。

「うん、今日は酒場のお手伝いがお休みだから、ラケルと森に遊びに行くの♪マスター、それじゃあ行ってきます!」

「あぁ、いってらっしゃい」

マスターは、ティールにゆっくり楽しんでおいでと言って、アルターが注文していたスタミナ丼をカウンターに出した。
マスターにペコリとお辞儀をすると、ティールは外に出ていった。
カウンターの丼を手にして、アルターは少しふてくされた顔をしながら肉を口に運んだ。

「ちぇっ…ティールがいないんじゃ、メシのうまさも半減だぜ…」

「悪かったな、無理して食わなくていいんだぜ?」

食いかけの丼をマスターに取り上げられて、アルターはあわてて丼を取り返した。

「わわわっ、嘘だッ!マスターのスタミナ丼サイコー!!これ食わないと気合いが入んないんだよッ!」


***


そよ風が翠色の髪をなぜる。
空にぽっかり浮かんだ雲を見ながら、ラケルは、ティールをどこへ連れていこうか考えていた。
連れていきたいところはたくさんある。
まるで空と繋がっているような、蒼が広がる湖が良いだろうか?それとも、花が咲き誇る丘がいいかな…?
ラケルが頭を悩ませていると、背後から声をかけられた。

「ラケル、お待たせ!ありがとう、迎えに来てくれたのね」

「うん、ティールは方向音痴だからね。ぼくがついていないと心配だから」

ラケルがそう言うと、ティールが自信満々で言った。

「まあ、ラケル!わたし、ラケルの家までは一人で行けるようになったのよ?」

「本当に?ユーンに案内してもらわなくても?」

「ええ!」

「…ふうん。でも、やっぱりティールは方向音痴だから心配なんだよ」

キュッと、自分より小さなティールの手をにぎって、ラケルは森を目指して歩きだした。

三日ぶりの晴れもよう。
陽の光が似合う彼女とどこへ行こうか。
行き先はまだ決まっていないけれど、それは、二人で一緒に考えればいい。
時間はたっぷりあるのだから!



あとがき
人間関係的にはラケル→ティール←アルターな感じで、ティールから双方には仲間って感じでしょうかね?

2010年6月14日 風の字

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