貧乏トレハンは今日も行く | ナノ
#貧乏トレハンは今日も行く
「今月の残金…あと千円………はぁ」
新米トレハン風晴蒼太は、自分の財布内の所持金を確認してため息をついた。
「これじゃあ、マミーズで飯食ったら消えてなくなる…」
そこそこにクエストをこなし、所持金を稼いでいた。
が、雑魚一掃に爆弾は良いなと、調子に乗って所構わずリカちゃんと意気投合して爆弾を投げまくっていたのが間違いだった。
物価の高いJADEショップで、爆弾をまとめ買いしては雑魚一掃と投げまくる。そんな浪費生活のツケが回ってこの状態。
新米とはいえ、仮にもプロの《宝探し屋》が情けない…。
「とりあえず、学校の備品を売りさばいて、何とかしのぐか」
せこせこと昼休み、夜の校内でかき集めた備品を売りさばく。
これじゃあ《宝探し屋》なのか、《泥棒》なのか、さっぱりわからない。
ともかく、なんとか金を工面できたが、この調子では必要な装備品はなかなか揃えそうにない。
資金繰りにさんざん悩んでたどり着いた結論は…
「そうか!何も買う必要は無いんだ!!」
そう、身近にある素材で何とかすればいいだけのこと!既製品にとらわれる必要はない!!
大事なのはオリジナリティだ!!!
とはいえ、使い勝手の良いガスHGのような爆弾、どのように作れば良いものか。
「最後のひとつ…これを解体して、爆弾の構造を理解して複製するっきゃないか…」
爆弾の解体、複製などとはかなり危険な行為である。普通やろうなんて思わないものである。
しかし、金の無い貧乏トレハン風晴蒼太!爆弾量産のために背に腹はかえられんっ!!
覚悟を決めて床に座ると、工具箱から特殊なドライバーを取りだし、中の構造を見るために細心の注意を払いながら外装をはがしていく。
「爆薬はこのように詰めてあって…成分はなんだろう?…信管と安全装置に安全ピンは…」
ぶつぶつ言いながら構造を観察していたその時、着信音が鳴った。
『メールが届きました』
「ん?こんなときに誰からだろう」
机の上にあるH.A.N.Tを確認しようと立ち上がり、解体中の爆弾に振動が伝わらないように注意して歩く。
が、自分が散らかしたドライバーに足を滑らせた。
「わわわっ!!」
蒼太は体のバランスを崩しよろめいた。
その時、持っていた爆弾をうっかり手放してしまった。
「や、やべえ!!」
尻餅をついて、宙に舞う爆弾を見ながら、とっさにベットの方に転がり、布団を引っ張り被る。
放物線を描き、落ちてきたそれは、
コン
と壁に当たると、派手な爆発音と閃光を発した。
パラパラパラ…
爆風とともに壁を砕いた破片が辺りに散らばる。
「………」
蒼太は恐る恐る布団から顔を出すと、大きな穴が開いた壁を見た。
その壁の穴から訝しげに顔を覗かせている者が一人…。
「…そーちゃん、これはどういうことだ?」
夕飯の準備中だったのか、皆守はしゃもじを片手にして言った。
「…は…ははっ…、やあ!こ〜ちゃん、元気か?」
蒼太は気まずそうにしながら、布団から飛び起きた。
「ちょっと手が滑って、穴あけちまった」
わははと苦笑いをする蒼太に
「即修理しろ!」
呆れた顔で皆守が言い放ったが、
「金がないから無理だ。…そうだ!それにこの方が、いちいち扉開けなくていいから便利だと思わん?」
「どう便利なんだ!?」
げんなりした様子で皆守が問う。
「遺跡探索の時、いちいちメールで呼び出さなくていいし、レトルトカレー漁り放題だ!」
「…それはお前だけの利点だろうがッ!っつーか、俺のカレー持っていくな!!」
「まぁ、いいじゃん!こまいことは気にしない!!こ〜ちゃんが隣で助かったよ。よろしくな!ルームメイト♪」
「ったく、なにがルームメイトだッ」
ぼやく皆守をよそに、蒼太は大きく伸びをして、
「あー、はらへった。こ〜ちゃん、俺にも飯分けてくれよ!」
自分が作った大穴から、皆守の部屋に踏み込んだ。
「やれやれ…」
皆守自身もマイペースだが、蒼太のマイペースぶりにはもはや言葉も見付からず
「…ま、その辺に座ってろ」
皆守は、煮込んだカレーを盛り、蒼太に渡した。
「おう!うまそうだっ!!」
いただきまーす!と、がっついて食べる蒼太の横で、皆守はカレーを味わいながら、毎度お馴染みのカレー講座を説いていた。
ちなみに、先ほどH.A.N.Tに届いたメールはというと…
送信者:皆守甲太郎
件 名:カレー
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新しいスパイスを調合してカレーを作ってみ
た。食ってみるか?
あとがき
爆弾に関しては、知識がないので、でたらめッス。
ちなみに、風の字はゲーム前半、クエストの存在すら気がつかずに、毎日学校の備品で生計をたてていました(笑)
銃弾も爆弾もないので、つねにコンバットナイフで頑張っていました(^_^;)
しんどかったなぁ…
2009年1月11日 風の字