純情少年?2 | ナノ
#純情少年?2


宿屋のラウンジで、ガボは、大きな口を開けてあくびをした。
重く閉じかけているまぶたをゴシゴシと擦って、座っていたソファーからとびおりた。

「ふぁ〜あ、ねみー…オイラ、先に部屋にいってねるぞ。アルス、マリベルおやすみー」

「おやすみなさい、ガボ。きちんとベッドで寝なさいよ!」

「今日はお疲れさま。ゆっくり休むんだよ」

ソファーに座って地図を描いているアルスと、その作業を見ているマリベルに背を向けると、ガボは階段をのぼり、部屋に入っていった。

「ガボ、よっぽど疲れたんだね」

「そりゃそうよ。今日の冒険はとてもハードだったもの。あたしはゆっくりお風呂に入って、さっぱりしたわ」

今ラウンジにいるのは、アルスとマリベルの二人だけだ。
アルスは、この辺の地図を大雑把に描きながら、マリベルと今日の冒険のことなど、他愛のない話をしていたのだが、しばらくすると、マリベルからの返答がない。
どうしたものかと、アルスは、地図から彼女の方に視線を移した。
マリベルは、気持ち良さそうにソファーにもたれて眠っている。
先程彼女も口にしていたが、今日の冒険はハードだったから、さぞ疲れたのだろう。
しかし、このようなところで寝ていては風邪を引いてしまう。

「マリベル、起きてよ」

「………」

部屋に戻って寝るようにと言っても、体を揺さぶっても、安らかな寝息が返ってくるだけで、いっこうに目覚める気配はない。

「まいったなぁ…」

こうなったら部屋まで運ぶしかないと思ったアルスは、地図を片付けると、マリベルの腕を自分の肩にかけて横抱きにした。

「ん…」

起こさないように、そっと抱きかかえたつもりなのだが、起こしてしまったのだろうか?
腕の中のマリベルの顔をのぞいてみたが、すやすやと眠っている。
ほっとひと安心して、ゆっくりと階段をのぼり、部屋にたどり着くと、彼女をそっとベッドに横たわらせた。
あとは、自分の寝床へ行き眠るだけだったのだが、突如アルスの首に、寝ぼけたマリベルが抱きついてきた。

「ん…チョコ…ただいま…」

彼女の寝言を聞くと、どうやら飼い猫の夢を見ているようだ。
思いがけずにマリベルの首もとに顔を埋める形となってしまったアルスは、どうすることもできず、固まってしまった。
自分の顔がカッと熱を持ち、心臓が激しく打っているのがよくわかる。
顔を埋めているマリベルの髪からは、花のようないい匂いがする。
やわらかな頬をすりよせられ、耳元にかかる彼女の寝息がとてもくすぐったい。

「チュッ…」

「ッ!!」

寝ぼけているマリベルは、唇をよせてアルスの耳元に軽く短いキスをすると、彼の頭を優しくなでた。
それは、夢の中の飼い猫チョコに対する行為であるのだろうけども、猫と間違われているアルスにとっては、なんとも刺激が強すぎる。
このままでは、いろいろと都合が悪いし、身が持たない。
アルスは、この状況をなんとかしようと、力のゆるんだマリベルの腕の中から、抜け出そうと、頭を動かしたが…

「……だめ…」

もう少しで抜け出せるかと思っていたのだが、再び寝ぼけたマリベルが、アルスの頭にぎゅっと抱きついた。
むにゅっとした柔らかなものが、アルスの頬に触れた。

「!!!」

マリベルの首元から脱出したと思いきや、今度は彼女の胸元に顔を埋めるかたちになってしまったアルス。
薄手のねまきごしに、マリベルの体温と、やわらかな感触が伝わってくる。
幼い頃、母マーレの胸に抱かれたことはあったが、この年になって、母以外の女性の胸元に顔を埋めるなど、アルスにとっては初めてのことであった。
マリベルの規則正しい心音とは対照的に、アルスの心音は、いまにも破裂しそうなくらいに、激しく脈打っている。
身体中が熱い。
今置かれている状況は、あらゆる意味で非常にまずい。
アルスは、自分の後頭部に回されたマリベルの腕を引き離し、胸元から顔を離した。
強引に腕を引き離してしまったものの、マリベルを見やれば、起きたような気配はない。
ホッとひと安心して、今度こそ彼女に布団をかけると、アルスは逃げるように自分のベットに潜り込んだ。
ドキドキと打ち鳴らす心臓を落ち着かせようと、何度か深呼吸をして、暗闇の天井を見つめた。
いくらか気持ちが落ち着き、体の火照りが引いてきたアルスは、眠ろうとそっと目を閉じた。
しかし、目の前に浮かび上がるのは、先ほどの一連の出来事。
そして、マリベルの良い香りと、唇、やわらかな感触、温もり…。
思い出して、かえって目がさえて眠れなくなってしまった。
なんとか眠ろうと、ぎゅっと目を固く瞑り、何度も何度も寝返りを繰り返すが、眠れない。
羊を10万匹ほど数えてみたが、やっぱり眠れず…。
ようやくアルスが眠りについたのは、朝日が昇りはじめ、空がしらんで来た頃であった。






あとがき
もともとは、日記2のほうに書いていた妄想話を、削ったり、少し手を加えたり、続きを付け足したものです。
「純情少年?」の続きと言うわけではありませんが、こんなタイトルです。

妄想話の続きをかきたいなーと思っているのは結構あって、その中のひとつです。


あと、マリベルの飼い猫の名前、勝手にチョコと命名。
捏造しました。当サイト限定設定ということで。

この話の続きとしては、ようやく寝付いたアルスは、マリベルに起こされるのですが、アルスがねぼけてマリベルに抱きつくってのもありだと思うんですが…ひとまず、妄想にとどめておこうかと思います。

久々の更新が、妄想全開なお目汚し駄文でごめんなさーい(^_^;)


2013年10月21日 風の字




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