この幸せが続きますように | ナノ
#この幸せが続きますように


夜明け前の薄暗い空に、星がかすかに光る。
辺りには、静かな波の音のみ響き渡る。
静寂に包まれた村の教会の屋根に、二つの人影があった。
その人影は、身を寄せあいながら一緒に厚手の外套を被り、東の空を見つめていた。

「はぁ…寒い。…いつになったら、太陽が出るのよ?」

少女は、寒さで赤くなった頬をぷうっと膨らませ、上目遣いに、じろりと隣にいる少年をにらめた。

「東の空もしらんできたし、もうそろそろだと思うよ」

苦笑いをしながら少年がなだめるようにそう答えると、少女は「本当かしら…?」と、ポツリと呟いて、少年の胸元に顔を埋めた。
寒さに震える少女を温めようと強く抱きしめて、少年は東の空を見つめた。
微かな星の光すら見えないくらいに空がしらみ、水平線の彼方から、真っ赤な朝日が、ちょこんと頭を出した。
海面に映る朝日は、まるで炎の揺らめきのようだ。
東の空は、朝焼けでうす赤く染まり始めた。

「ほら、マリベル、初日の出!」

「綺麗…。朝日で海が燃えているみたいね」

「うん…」

キラキラと輝く初日の出を見つめながら、マリベルは言った。

「…あたしね、冒険に出る前は、毎日毎日変わらない単調な日々を過ごすのが、たまらなく退屈で嫌だったわ。
でも、冒険をして、本当の世界を取り戻したからこそ、当たり前にあるこの退屈な日常こそが幸せなのかなって、ちょっとだけ思うの」

「そうだね。当たり前の中に、この上ない幸せがあるんだ…」

アルスは、少し身を屈め、自分のおでこをマリベルのおでこにコツンとあてた。
すこし照れ臭そうに頬を赤らめ、優しい瞳でまっすぐに彼女を見つめて言った。

「毎日、朝になれば日が昇るように…、僕にとっては、小さな頃からずっとマリベルが側にいてくれるように…」

「アルス…」

アルスは、マリベルの頬を愛しげに撫でた。

「好きだよ、マリベル…」

マリベルだけに届くように、小さな声で愛の言葉をささやいた。

「あ…あたしも…」

寒さや朝日のせいではないだろう。熱を帯びて耳まで真っ赤に染めたマリベルは、アルスを見つめ返すと、はにかみながらも素直に言った。

「…アルスが…好きよ…」

互いに幸せな笑みを交わすと、そっと唇を重ねた。





あとがき
なんか、いまいちですが、今年最後の更新です。
恋人関係にあるアルマリですね。
アルマリに関しては、除夜の鐘が鳴らされようが、煩悩は消えませんから(笑)
また来年ものんびりアルマリを愛でていこうと思いま〜す。

2013年12月31日 風の字






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