夢で逢えたら | ナノ
夢で逢えたら


「こんにちは。その…、久しぶりだね、マリベル。元気そうでよかった。アミットさんも良くなってきたみたいだし…」

旅から戻ってきたアルスが、マリベルに会いに来た。
久しぶりに見る彼の姿が、少したくましく見えるのは気のせいだろうか?
とりあえず、かわりなく元気そうで、マリベルはほっと安心したのだが、なんだか面白くない。
腹立たしくなって、不機嫌な顔でそっぽを向いた。

「……フン…」

「どうかしたの?」

「…あんたはいいわよね、好きに旅に出られて…。あたしだって、あんたの旅について行きたいけど…パパはまだ本調子じゃないし…」

「マリベル…」

申し訳なさそうにするアルスを見て、マリベルは後悔した。
素直に『おかえりなさい』と、伝えられたなら良かったのに、どうしてこう可愛いげのない態度をとってしまうのか…。
アルスにあたったところで、現状が変わるわけでもない。
『ごめんなさい』と、素直に謝れたら良いのだろうけれど、言葉が出てこない。
マリベルが黙っていると、アルスが口を開いた。

「僕だって、マリベルと一緒に旅がしたいよ。マリベルが側にいてくれないと、調子が狂うというか…、とても、困る」

「アルス…」

「…アミットさんが大変な時に、こんなこと言うのは良くないと思うけれど…はなれてみてわかったんだ。僕の中で、マリベルの存在が、どれほど大きく、大切なのか…」

アルスは、しっかりとマリベルの両肩をつかむと、彼女をまっすぐに見つめた。

「…ア、アルス?」

マリベルは顔を一気に紅く染め、戸惑いながらも目をそらさずに彼を見つめかえした。
アルスも顔を火照らせて、緊張した面持ちで言葉を続けた。

「…僕は、マリベルのことが…好きなんだ…」

アルスの告白に、マリベルの胸がドキンと高鳴った。
ずっと聞きたかった言葉、やっと言ってくれた言葉。
その告白に返す言葉は、小さい頃からずっと変わらずに決まっている。
いまこそ素直に伝えようと、マリベルは口を開いた。

「…あたしも…あんたのこと…」

胸がいっぱいで、これ以上言葉にならない。
意を決して、マリベルがそっと瞳を閉じた。
アルスは両手でマリベルの頬を優しく包み込むと、彼女との距離を縮めた。
あと少しで唇が触れるような距離で、アルスも瞳を閉じた。







ジリリリリリ………

夢の世界から現実世界に引き戻す鐘の音が鳴った。
パッチリと目を開けたマリベルは、目覚まし時計のベルを乱暴に止めた。

「な、なんなのさ!あと少しだったのに……じゃなくって、な、なんであたしが、アルスとキ…」

夢の内容を口にするなり、たまらなく気恥ずかしくなったマリベルは、布団を頭からすっぽりかぶってうずくまった。
ただの夢だというのに、顔は火照って、心臓がドキドキしている。

「…アルスのバカ!早く元気な顔見せなさいよ…」

封印された地を復活させるために、今も戦っているであろうアルスたちの無事を願いながら、マリベルは再びまぶたを閉じた。

『どうか…夢じゃなくて、本当に逢えますように…』





あとがき
なんか、ネタメモの予定だったのに、勢いで書き上げてしまいました。(笑)
毎度妄想炸裂な駄文でごめんなさい〜!

2013年5月23日 風の字

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