#2まさかの學園生活 | ナノ
#2まさかの學園生活
中学を卒業し、《ロゼッタ協会》に所属した風晴蒼太…もとい、協会でのコードネーム−ID-0999・葉佩九龍−は、この二年半、《宝探し屋見習い》として、プロの《宝探し屋》のバディとなり、数々の遺跡を探索した。
バディとして、プロの《宝探し屋》に付き従うことで、武器の扱いからトラップ解除方法など、先輩の見事な技を直に見て体験し、学ぶことができた。
ほぼ毎日が遺跡探索の日々であったが、不思議と飽きることはなかった。
増えてゆく新しい知識、発見したときの喜びと、尽きることのない好奇心と探求心、遺跡への情熱が、彼の長期の探索で疲れきった体を突き動かした。
時には命の危険にさらされることもあったが、知恵と勇気と閃きと、幾多の経験で乗り越えた。
約二年半の見習い期間を終了し、プロの《宝探し屋》として、案内人のサラーをバディに迎え、挑んだ遺跡はエジプト・カイロのヘラクレイオン。
遺跡に眠る《秘宝》を手に入れ、なんとか初任務を無事に終えることが出来たかと思いきや、協会から新たな指令が届いた。
−天香學園に眠る《秘宝》を入手せよ−
蒼太は、H.A.N.Tに届いたメールを見て唖然とした。
まさか、天香學園の学生として、遺跡に潜ることになるとは…。
学生生活から離れ、《宝探し屋》としての生活にすっかり馴染んでしまったこの体…。
「こんな俺が、もう一度學園生活なんか送れるのか?」
蒼太にとっては、未知なる遺跡に潜ることよりも、學園での生活の方が、ずっと大きな不安要素であった。
***
カイロから、空路を継いで成田へ…。
蒼太は、手続きの書類とともに渡されていたコインロッカーのキーを使い、協会から支給された学用品を取り出した。
《宝探し》に使う装備品は、あとで寮に宅配便で届くらしい。
とりあえず、支給された学生服に着替える。
上着のボタンをかけて、襟元のホックをしめると、自然と気が引き締まる。
制服の内ポケットには、何があってもいいように、協会特製携帯用の工具箱を忍ばせておいた。
成田から電車を乗り継ぎ、新宿駅で下車する。
そこから数分歩くと
−私立天香學園高等學校−
という立派な門が構えてある。
この學園は、明治元年に創立されたという。
広い敷地内には、古びた校舎、男子寮、女子寮、中庭、温室、教職員用の寮等がある。
長期休暇期間以外、學校の敷地内から外へ出ることは禁じられているということで、敷地内には生活に不自由しないようにと、設備が行き届いている。
この歴史ある学園には、どのような《謎》と《秘宝》が眠っているのだろう。
それを思って、蒼太は自然と微笑を浮かべていた。
いつの間にか、始めに感じていた學園生活に対する不安は消えていた。
「…よし、行くかっ!!」
自分自身に気合いを入れて門をくぐる。
まさかこの學園で、彼の人生にとって、なにものにもかえがたい《秘宝》とめぐり逢うことになるとは、全く思ってもいなかったのであった。
あとがき
#1と#2で、普通の生活にサヨナラして、トレハンになり、天香學園に来るまでの過程をなんとか書き終わりました(^-^;
結構どうでも良い前置き乱文であります。
ともかく、これでようやくドタバタ路線が書けそうです!
次からは學園生活での日常のドタバタヒトコマを目指して書いていく予定です。
宜しければ再び乱文におつきあいくださると嬉しいッス。
2008年12月13日 風の字