僕らのたまご戦争(前半) | ナノ
#僕らのたまご戦争(前半)


「ふん…俺の情報網にかかれば、この程度、造作もない。」

暗闇の中、ノートパソコンのディスプレイを見つめ、少年は、満足げにニヤリと笑みを浮かべた。


***


「ただいま帰りましたッ!」

草凪晃輝は、ガラガラと玄関の扉を開けて、靴を脱ぎ、家の中に足を踏み入れると、白と雉明零が出迎えた。

「晃輝、お帰り。」

「晃輝、どこで道草を食っておった。帰りが遅いぞ。」

「ただいま…って、そんなに遅いか?いつも通りだと思うけど。」

晃輝が、少し困ったように頭を掻いて笑うと、

「白は、今日の夕御飯をとても楽しみにしているんだ。」

と、雉明が目を細めて言った。

「ん、今日の夕御飯…?」

「…今日はすき焼きだ。晃輝、早く自分の部屋に鞄置いてこい。飯にするぞ。」

羽鳥清司郎が、面倒臭そうに居間から顔を覗かせて言った。

「そういうことじゃ。これ晃輝、はようせぬか!」

「お、おう!」

晃輝は白に急かされて自室に向かい、鞄を下ろして居間へ向かった。
テーブルの上にはコンロが設置されていて、コンロの上には、グツグツとすき焼きの鍋が煮えている。

「いい匂いだ。」

雉明が目を閉じて、すき焼きの匂いを胸一杯に吸って言うと、

「そうだな、とても旨そうだし!さすが、親父さんッ!!」

鍋を覗き込んで、待ちきれないと言わんばかりの様子の晃輝。
その横で白が微笑み、コクリと頷いた。

「うむ、すき焼きとはどのようなものか楽しみなのじゃ。」

「朝子は遅くなるみたいだからな、先に食うぞ。」

清司郎は、取り皿と漬け物の入った皿をテーブルの上に置いて、再び台所へ行き冷蔵庫を開けるなり、顔をしかめた。

「親父さん、他に何か運ぶものはありますか?」

清司郎を手伝おうと、台所に顔を出した晃輝は、顔をしかめる清司郎に、どうかしたのかと尋ねた。

「…悪いな、卵を買ってくるのを忘れたみたいだ。これから買いに行ってくるから、もう少し待っててくれ。」

申し訳なさそうにする清司郎に、

「親父さん、なんなら俺が買ってきますよ!」

晃輝が笑ってそう言うと、清司郎は、そうか、すまないが頼まれてやってくれと、苦笑いをした。

「くれぐれも、その辺に落ちているような、得体の知れない卵は、拾ってくるんじゃねぇぞ。」

「わかってますッて!」

晃輝は、ちょっと情けない笑みを浮かべてそう告げると、居間に戻った。
白と雉明に、卵を買いに行ってくるから、少し待っていてくれと伝えると、雉明がスクッと席を立った。

「買い物か…。おれも一緒に行って良いだろうか?」

「あぁ、構わないけど。零、何か買いたいものでもあるのか?」

「明日の分の焼きそばパン。」

「なるほど。」

晃輝は納得して頷き、白に行ってくるからなと言うと、白も席を立った。

「妾も、其方等と共に参るぞ。」

白まで一緒に行くと言うとは思わなかった晃輝は、目を丸くして、

「白も、何か買いたいものがあるのか?」

と、尋ねた。
白は、パタパタと手持ちの扇子をあおいで、口元にあてて言った。

「妾は、新しいすなっく菓子を買うのじゃ。」

そんなわけで、三人一緒に買い物に行くことにした。



長くなる(?)ので後半へ続く(またか(^-^;)
2010年5月31日 風の字

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