手をつなごう | ナノ
#手をつなごう


あたたかなお日様の光が、辺りを優しく包み込む午後。
大好きな人と一緒に街を歩いていると、自然と目に入るのは、街を行き交うカップルの姿。
指を絡めて手を繋いだり、腕を組んで歩いてみたり。
さらには身をよせあい、肩を抱いて歩いていたり…。
見ているこっちが恥ずかしくなるくらいラブラブで、当人達は恥ずかしくないのかな?と思う一方で、なんだか羨ましく思ってしまう。

『あたしたちも恋人同士だし…手をつなぎたいなぁ…。』

あたしは、並んで歩いている彼の方をちらりと見た。
背中を少し丸めて気だるそうにあくびをすると、眠たそうな様子でぽりぽりと頭を掻き、両手をポケットにつっこむ。
ポケットに手をつっこんでいては、なかなか手をつなげそうにない。
じぃーっと見つめていると、あたしの視線に気がついたようだ。

「…どうかしたか?八千穂」

「う、うん…。」

素直に『手をつなごう』と言って、皆守クンがつないでくれるわけないし…。

「あ、あのね、この間テレビで手相やってたの。皆守クンの手相見せて!」

「手相だぁ…?手のシワなんかで未来がわかるわけないだろ。」

あきれた様子でそう言ったけど、あたしは皆守クンの腕をつかんで、ポケットから手を引きずり出した。

「いいから、見せて!」

「いてッ、馬鹿力で引っ張るなよ。」

「馬鹿力じゃないもん。」

皆守クンの言葉に反論しながら、あたしは彼の手を見てみた。
手相を見せてと言ってはみたものの、…正直な話、手相はよくわからないんだよね。
すらりとした長い指、ひんやりとした皆守クンの手が意外に大きくて、なんだかドキドキしてしまう。

「…で、どうなんだ?俺の手相は…。」

「えッ!?」

「なんかわかったか?」

「えっと…わかんない。」

えへへと笑ってそう言うと、皆守クンはやっぱりなといった表情をして、手を引っ込めようとした。

「手のシワなんかで俺のことがわかってたまるかってんだ。」

引っ込めようとする皆守クンの手を、あたしは慌てて掴んだ。

「…どうした八千穂、まだ何かあるのか?」

がしっと手を掴まれて、少し驚いたみたいで、皆守クンは目を丸くしてあたしを見た。
あたしにしてみれば、手をつなぎたくて彼のポケットから手を出させたのに、またしまわれては困る。
とはいえ、どんな口実をつけて、この手を引き留めたらいいのか思い浮かばないし…。
やっぱり、素直に自分の気持ちを打ち明けることくらいしかできそうにない。
こんなことを面と向かって言うのは、少し気恥ずかしいけれど…。

「…あたし、皆守クンと手をつなぎたいなぁ…。」

心臓がものすごい早さでドキドキして、頬が熱くなってるのが自分でもわかる。
まっすぐに彼を見つめてそう言うと…、

「─なッ!…手をつなぐなんて…小学生の餓鬼じゃあるまいし…。」

見つめるあたしから目をそらして、プイッと横を向くと、皆守クンはそう言った。
手をつなぐの…嫌なのかな?
それでも、あたしが掴んだ手を引っ込めない彼の横顔をみれば、いつも通りの眠そうな表情で…、だけど少し頬が紅い。
耳たぶも紅くなっていて…、皆守クンも照れくさいのかもしれない。

「小学生じゃないけど、手をつなぎたいんだもん!」

そう言って、掴んでいた手をキュッとにぎると、その手が優しくあたしの手をにぎりかえしてきた。

「…皆守クン?」

皆守クンは、少し困ったような、照れくさいような複雑な顔をして、空いている方の手でポリポリと頭を掻くと、あたしの方を向いてぶっきらぼうに言った。

「…仕方ないな、ほら、行くぞ。…手、はなすなよ。」

「…うん!」

あたしが笑顔で頷くと、皆守クンがふと優しく微笑った。





あとがき
珍しくやっちー視点ですね。
あ…あまい、あますぐるッ!!
つーか、あんたら誰状態(爆)
ぐはっ!!!
基本片想いが好きな風の字ですが、珍しく恋人同士っぽい皆八を書いてみようかと思いました。
あまり普段と変わらない感じ(?)ですが、ビミョーに初々しい感じです??
好きなカップルなので、考えている本人が恥ずかしくて死にそうでした(笑)

えっ!このくらいであまいの?

なんて、言われるかもしれませんが、少女マンガとか、ベタベタしすぎる甘い展開が苦手でこそばゆい自分にしてみれば、この程度で瀕死状態なんッスよ(^_^;)
好きなカップルほど、甘いのは書けないやつですね。
何気ないのが好きなので(笑)

2010年4月14日 風の字

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