#16メリークリスマス!(前半) | ナノ
#16メリークリスマス!(前半)


街は陽気なクリスマスソングが流れ、赤と緑の色が鮮やかだ。
賑やかなイルミネーションの中、サンタクロースの格好をした連中が、かきいれ時とばかりに、はりきって客の呼び込みをしている。

(そうか…今日はクリスマスイブなんだな…)

俺は、凍てつくような冷たい風に首をすくめながら、賑やかな通りをぬけた。
考えてみれば、『あの日』から丁度一年になる。
ただの人の身である親友が、持ち前の勇気と知恵で、俺たちの呪われた使命、過去の呪縛から解き放ってくれた『あの日』から…。
去年のクリスマスイブは、それがまさに聖夜にふさわしい出来事だったのではないかと思う。
今年のクリスマスイブは、特に予定があるわけでもなし、ましてや俺は、熱心なキリスト教信者でもない。
クリスマスイブだからといって、特別なことがあるわけでもない。
いつものように家に帰り、作っておいたカレーでも食べて寝ようと思いながら、歩みを進めた。
しばらくして、チラチラと白いものが空から降ってきた。

「…雪か…」

どおりでひどく冷える訳だ。
冷たい風にさらされ、凍りついてしまいそうな両手をポケットに突っ込んだが、なかなか温まりそうにない。
寒さに耐えかねた俺は、ポケットから小銭をとりだして、近くの自販機で温かい缶コーヒーを買い、それをポケットに突っ込んだ。
じんわりと缶の温かさが伝わってくる。
しかし、寒いことには変わりないので、体を温めるためにも、小走りで家に帰ることにした。


***


自分の部屋の玄関前で、体についた雪をはらった。
玄関の鍵を開けようとドアノブに手をかけると、カチャリとドアが開いた。

(鍵をかけ忘れたか…?)

しっかり戸締まりをした気がするが、していなかったのかもしれない…。
ともかく、早く部屋で暖をとりたい俺は、真っ暗な玄関に足を踏み入れた。
…と、同時に、玄関の明かりがパッとついたかと思うと、両側から

パンッ!パンッ!!

と音がした。

「―ッ!!?」

「「メリークリスマースッ!!」」

突然のことに驚きながら、俺は目の前にいる人物を見た。
そこにはサンタの帽子に、サンタの服を着たお団子頭と、トナカイのツノを頭につけ、顔に赤い鼻をくっつけた親友の姿があった。

「やっほ〜ッ!今年一年良い子にしていた皆守クンのところにスペシャルゲスト!サンタのおねえさんと、赤鼻のトナカイクンがやって来ました〜♪」

「赤鼻のトナカイで〜す♪こ〜ちゃん、防犯のためにも、玄関のドアの鍵、かえた方がいいと思うぞ?このドア、素人でも鍵開け簡単にできるからさ。泥棒が入るとヤバイだろ?」

どうやら俺は、しっかりと戸締まりをしていたようだ。
鍵をこじ開けたのは、目の前にいる赤鼻のトナカイらしい。
前科が数えられないほどあるから、こいつが開けたのなら納得だ…。
俺は、あきれた顔をしながら、髪についたクラッカーの中身をはらうと、ため息をひとつついて言った。

「…お前ら、勝手にひとんちに上がって何やってんだよ」

「何って、クリスマスパーティーに決まってるじゃない!ねッ、蒼太クンッ!」

「おうッ!去年のクリスマスイブは修羅場だったからさ、今年は存分に楽しもうぜ!」

相変わらず元気がありあまっている八千穂とそーちゃん。
二人の元気な姿が見れて嬉しいものの、久しぶりに会ったせいか、何だか少し照れくさい。
俺は、ポリポリと頭を掻きながら、二人から視線をはずして靴を脱いだ。
本当は嬉しいのだが、わざと仕方がなさそうに言ってみる。

「…ッたく…俺の都合はお構いなしかよ。ツリーもケーキも何もないが、文句なしだからなッ!」

俺の言葉に、二人は笑顔で頷いた。






駄文にお付き合いくださりありがとうございました〜♪
卒業して一年。皆守視点での話です。
後半に続くのです。
更新の遅いこのサイトに来てくださる方に感謝を込めて、クリスマスまでに間に合うよう、書ききるように、がんばります!!


2009年12月23日 風の字


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