君に告げる | ナノ
#君に告げる
『好きだッ!』
自分の胸に秘めた熱い想いを、素直に口にして伝えればいい。
ただそれだけのことなのに、当人を目の前にすれば、心拍数急上昇!
火がついたように、カアッと身体中が熱くなって、思考回路がショートして再起不能…。
普通の学生として、一緒に過ごせる時間は限られている。
卒業まで残された時間はあとわずか。
自分の想いに対して、『YES』か『NO』か。
彼女の返事がどちらであれ構わない!
結果よりも、想いを告げられない事の方が、きっと、ずっと後悔。
いい加減ハッキリ想いを告げられない自分が嫌になって…、でも、今日こそは絶対に想いを告げてやるのだッ!!
固い決意と共に、拳も固く握り、俺は彼女のもとへ走り出した!!
いつもの図書室、幸いなことに人気はない。
辺りを見回せば、本を抱えた彼女の姿を発見!
そうだ、今日こそ想いを伝えるんだ!
早鐘のようにうちならす心臓、頼む、少しは落ち着いてくれ。
深呼吸を二、三度して、俺は彼女に声をかけた。
「な、七瀬さん…」
「あッ、蒼太君、どうかしました?」
本を片手に、俺の方を振り返り、にっこり微笑む彼女。
やっぱり緊張する。
みるみる顔が紅潮していく。
「あぁ…その…」
「…?」
言葉をつまらせた俺を、不思議そうに見つめる彼女。
喉元まで出かけているこの言葉。
引っ込めるな!
伝えるんだろ?
男に二言なし!
決めたら直球勝負!
即実行ッ!!
これが俺の生き方だ。
結果なんか恐れるな!
ありったけの勇気を出すんだッ!!
「す…」
「………」
そうだ、声にするんだ!
「…すしだッ!!!」
「…え?」
すこし声が裏返った。
勇気を出して…振り絞った言葉…かんでしまった。
「あ…その…」
伝えたい言葉を言い間違えてしまった。
改めて言い直そうと心の準備をしていると
「あ、そう言えば、八千穂さんが言っていましたね。《トロ職人》だって。」
「…へ?あ、あぁ…。」
「なにか新しい寿司でも作ったんですか?」
…そんな風に聞かれては、『すき』と『すし』を言い間違えたとは、とても言いにくく…
「あ、あぁ…、そう!新しい寿司、作る予定だからさ、是非食べてもらいたいと思ってさ」
頭をポリポリ掻きながら、彼女の話にあわせる俺…。
我ながら情けない。
これではもはや告白するような雰囲気でもない。
「そうなんですか、楽しみです」
嬉しそうに微笑む彼女。
笑顔が見れたなら、こんな話になってしまってもいいかなと思ってしまった。
それでも明日こそは、俺の想い…君に告げられたら良いなぁ…
あとがき
結局、うちの主人公は、恋愛に関しては奥手でヘタレです(笑)
2010年3月6日 風の字