笑顔で迎えてくれる、貴方
その笑顔の下に

「よっと」と小さな掛け声とともに荷をおろした。
山崎さんは部屋まで運ぶのは手伝うといってくれたけどこれくらいは自分でやらなきゃいけない。
私の手には両手で抱えきれないほどの荷がある。
屯所ですれ違う中、あまりにも体格と荷物の大きさが合わなくて、普通の隊士さんだって心配して声をかけてくれた。
それに感謝しながら私は荷物を半分引きずりながら目的の場所に向かう。

「沖田さん?いらっしゃいますか?」

と、部屋の前で声をかけると影が立ち上がって部屋に通してくれた、この新選組の幹部の一人である沖田さん。
彼はいつもの笑みを絶やさず「お疲れさま」といたわりの一言をかけてくれて部屋に通してくれた。

「重かったでしょう?」
「大丈夫、といいたいのですけど」

彼は今、胸の病を抱えていて、新選組副隊長の土方さんから外出禁止を受けている。
私と同じようなものなのだけど、私の状態はいくらかましだ。
新選組の幹部さんと一緒ならば巡回に同行してもいい。
今日は山崎さんにかなり無理を言って、私事をなしてきた。
今日、出かける前に沖田さんにまるで子供のようにねだられてお遣いを頼まれた。
目の前の荷物がその成果。

「本当にこれ、全部食べるのですか?」
「うん、君も一緒に食べるかい?」

土方さんが見たら渇が飛んできそうだ。
沖田さんが好きな菓子の山が今目の前にある。
早速、おせんべいを頬張る沖田さんを見ていると今日の苦労が浮かんでくる。
山崎さんにどうしてもとお願いして、迷いながら何件のお店を回ってきた。
屯所内で土方さんにばれないようにした。
いまさらかもしれないけどもしこれがばれたら私も共犯になるんじゃと考えると頭が少し痛い。

「おいしいのに」

子供みたいに無邪気に笑って私を向かいに座るように促す沖田さん。
私は素直にそれに従うと、沖田さんは荷物の中を探る。
そして小さな包みを取り出すと、私のひざの上に落とした。

「はい、君の分だよ」
「え?」

口をぽかんと開けたまま、私は沖田さんを見上げていた。
沖田さんはいつもどおり笑うと「お駄賃だよ」と笑った。
言葉を失うくらい、うれしかった。
まさか自分の分まで入っているとは思わなくて、そして沖田さんからもらったということが。
それは自分が買ったものだと思い出すと少しかゆいけど。
桃色の和紙に包まれているのは甘菓子。
うれしくて、うれしくて歌うように「ありがとうございます」と笑って返すと少しむっとしたように沖田さんは言った。

「飴一つでそんなに喜ばれるとちょっと複雑だな」
「え?」

少し不機嫌そうに繭を潜めた沖田さんを見て、私は何か気に障るようなことをしてしまっただろうか、と心配になったし自分もいった言葉を頭の中で反復していた。
そんな時、め、目の前に沖田さんの顔が接近していた。
急になんだろう、と思わず後ずさりするも「何で逃げるの?」と先ほどの不機嫌はどこに言ったかいつも人をからかうような声音で言う沖田さん。
その言葉に動きを取れなくなる。

「どうせならもっといいものあげるのに」

と鋭い瞳が私の瞳孔を捉えた。
顔が動いたら当たってしまうくらい近くて、沖田さんの吐息が頬にあたった。
視線で私は金縛りにあったように動けなくなった。
体がこわばって、言うことを利かない。
何より沖田さんの色っぽい声におびえた自分がここにいる。
思わず目を瞑って、下を向く。
刹那の時間、私は止まっていた。

なんともない?

何をされるか分からない、そんな恐怖か畏怖で動けなくなった、私の頭に沖田さんの手がぽんと落とされて何回がなでられた。

「そんな怖がらないでよ、何もしないよ」

と歌うように言った、沖田さん。
はっと顔を上げるとそこには優しい瞳のいつもの沖田さんがそこにいて、まるでおもちゃで遊ぶ子供ような瞳で私を見ていた。

「何?千鶴ちゃん、何か期待しちゃった?」
「き、たいって」

まさか、と思うと本当に一瞬血の気が引いたと思ったら、今度は体の芯から熱が登ってくるのが分かる。

「あ、の。失礼しました!」

急に体が言うことを聞かなくて部屋の外に走っていった。
どたどたどた、足音も気にせず、とにかく走った。

期待って、確かに、思った。
沖田さんの顔がとても近くてとか、あぁもうなんだかよく分からない。
とりあえず、胸が痛かった。
急に息苦しくて立ち止まる。
違う、こんなに胸が痛いのはきっと急に走ったせいなんだ、
他の理由なんてない。
自分の心臓の音がひどく五月蝿かった。
沖田さんがあんなことするのはからかってるだけだって分かってるはずなのに。
私の脈は高鳴って仕方ない。

「あ……」

少し後になって気づいたこと。
沖田さんの好意を忘れてきてしまった。

期待しちゃった?
 (少しからかいすぎた、かな?)
 「また行かなきゃいけないのか」



言い訳

もう、なんていうか
玉砕、爆砕☆
落ち着こうよ、自分。
オチが相変わらずぬるいし。まとまってないよ><

とにかく「期待しちゃった?」って沖田さんに言わせたくてかいただけという、ね。
もう一つ沖田さんの短編を書いたら次は斉藤さんを書きたいなとか思ってます。



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