拭いきれない涙がこぼれた

あなたは言う、泣かないでくれと

君の幸せが僕の幸せだと



Plum

「綺麗ですね」

感嘆の言葉を漏らす私に向けてあなたはただ微笑みかけるだけだった
寒い冬も過ぎ、春が訪れようとしていた
春一番を知らせてくれた小鳥たちに導かれるかのように、私と彼はただ山の遊歩道を目的もなく歩いていた。
ううん、目的ならあったかもしれない。

「そうだね」とつまんなさそうに答えた総司さん。
私が総司さんの顔をのぞきこむと彼はいつも通りにっこりと微笑んで「何?」と聞き返した。
いえ、と私が言葉を濁すと「いいなよ」と私の言葉を促す。
私は素直に従って思っていたことを口にした。

「いえ、誘ったのは私ですし。その逆に無理をさせてしまったのではないか、と」
「無理?なにそれ?」

意地悪な笑みを一瞬浮かべたと思えば今度は不思議そうに聞き返した。
私はなんと口にしていたらいいか、迷って言葉に出なかった。
総司さんの胸の病は日に日に悪くなっていく一方だ。
この土地の空気はとても澄み切っていて京の都に住んでいたときよりも断然、体の調子はいいというが、それでも冬の寒い間、総司さんのまるで事切れてしまいそうな苦しげな咳を何度も聞いてきた。

「また君はそうやって遠慮するんだね」
「遠慮なんかしてません」
「じゃあ、何?」
「えっと……」
「心配してくれてるの?」

総司さんは私の手を取るとまた歩き出す。
足を滑らせない程度の雪が残った山道をただひたすら歩き続ける私たち。
目的も、そのときは分からなくて、目的地もない。

「言ったよね?僕は君が望むことをしたいって」
「でも、それが」

総司さんを苦しめるとしたら?
なんて直接いえなくて私は言葉を呑んだ。
しかし、彼はにっこり口角を上げ笑った

「僕がこうやって君との時間を大切にしないとでも?」
「?」
「僕にとってはこの一瞬も大切なものなんだよ。君と歩いたこの景色一つ一つを刻みつけているんだ。たとえ僕がこの世界からいなくなったとしてもそのときが来たら、君が思い出してくれるように」
「総司さん……」

その言葉一つ一つが自分の身に染みてくるようだった。
とても奇妙な幸せだった、この一瞬だけでいいだなんて、笑われるかもしれないけど

総司さんの視線が外に泳いだ。
私が追うと、そこにはこの寒さの中、咲く花。
梅の花が硬いつぼみを広げ、鮮やかな紅を覗かせていた。
ただ、何輪か、数えるほどにしか、その色を彩ってはいなかったけどこの白の世界の主役。

「私、忘れませんよ。絶対に」

ぽつりと私がこぼした言葉。
私は何があっても絶対に今の一瞬を、総司さんを忘れたりしないのだろう。

「総司さんだけですから」
「そう、うれしいな」

笑った総司さんの顔が何よりも近くあった。
まるで何かに引き寄せられるかのよう、私はそっと唇を重ねた。
冷えた唇はくすぐったいようなものだった、けどそれすらも忘れない。
春梅、誰よりも気高く咲き、何もかも見届けたあとに散る、紅の華。

Plum
(それは高潔な思い)




言い訳
やっちゃいました(コラ
なにか、もう何が書きたいか分からない、玉砕☆
とりあえず、この時期だから桜?
いや、なんとなく梅になりました。
後半、よく分からなくなりますた、それよりも。
沖田さんにくさいこと言わせようとして失敗したんです。きっと。

なんか、もう恥ずかしい、ちょっと穴掘って埋まってきます。



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