封鎖

カドスの喉笛は半月前に通ったときとはまったく別の雰囲気だった。
あのときはまるで捨て置かれたように静寂に包まれていて、神秘的だったのだが、今はそれを侵す侵略者によって包囲されている。

「フレン隊です……」
「封鎖っていうのはやっぱりあれ?」

大体予想をしていたとおり、カドスの入り口は騎士団によって封鎖をされていて騎士団が目を光らせていた。
私たちは岩陰に隠れて騎士団の様子を伺う。
フレン隊の中にはソディアの姿もあって、私は一瞬、彼女に頼んで通してもらおうと思ったが、「誰も通すな」と命令をされているとするならばソディアの性格を考えると絶対に無理だろう。
まだ「ユーリを通すな」だったら考えてくれたかもしれないけども。

「ねぇ、あの魔物はなに?」

カロルが指さしたのは騎士団が手綱を握る魔物の姿だった。
魔物は目を光らせ、あたりを見渡す。

「騎士団が飼いならしたってとこかね」
「なんかフレンに似合わねぇ部隊になってんな。まったくフレンのやつなにをやっているんだ」

ユーリの言うとおり、フレンの思い描いている騎士団の姿とは遠く離れた姿になっている。

「これだけ大掛かりな作戦なら、やっぱ人魔戦争の黒幕って話と関係があるのかもねぇ」
「この検問、どうしよっか?」

とカロルが困ったように手を組むとパティがレイヴンの服の裾をつかみ引っ張る。
レイヴンが耳を寄せると、レイヴンが満面な笑みを浮かべて「やるやる!で?」と二人で話を進めていく。

「あ、そういえばいいものがある、かも」

と私がバックを探る。
奥のほうから私が探していた拳ほどの丸い玉を取り出す。

「こういうのはどうよ」

とレイヴンは弓を取り出すと、狙いを定める。
レイヴンの狙いは魔物に当たり、小さな爆発が起きる。
すると魔物は驚き、敵味方問わず暴れだしたのだ。

「な、何事だ!」
「やめろ!暴れるな」

何か起きたかも理解できずに騎士団は魔物を取り押さえようとするが突然の事態で魔物も敵味方の区別がつかなくなり、騎士団が取り押さえなければならない事態になっている。

「レイヴン、これも」
「あいよ」

と私は手にあった玉を騎士団に向かって投げると、レイヴンはそれを打ち抜いた。
白い粉が散布されるとそれは煙となって私たちと騎士団の視界を遮る。
私たちは向かう方角は覚えているが、騎士団は矢の居所つかめていない。
私たちはその隙を突き、一気に駆け抜ける。

「ユーリ・ローウェル!」

唯一、私たちの姿をつかんだソディアが叫ぶが、それを聞かないようにした。
必死に走って騎士団の足音が聞こえなくなったころ、ユーリなりの褒め言葉をレイヴンにかけた。

「珍しく派手に動いたな」
「何々、パティちゃんの助言あってよ。人間、ご褒美があるとがんばれるっていうじゃない」
「なによ、ご褒美って」
「ひ み つ。約束お願いね。パティちゃん」
「うざ……」
「ひ み つ。なのじゃ」
「なによ、あれ」
「どうせしょうもねぇ約束だろ。っていうかエルよく煙幕なんて持ってたな」
「あ。うん。前に使う機会があってね」
「どんな機会よ」

ぶっちゃけていうとギルドの仕事を個人でやっているといろんな人に追われる機会くらいあるものだ。

「早めに、エアルクレーネの場所に行こう」

と私が話を摩り替える。
色々追及はされそうだけど、今それを議論している時間はない。



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