プロローグ 


それはたった二人の兄妹の話だった。

妹はいつも兄にあこがれていた。
自分とは違う兄、積極的で何もかも簡単にこなしてしまうそんな兄。
妹は兄とは違っていつも消極的で努力なしには何も出来なかった

何でも出来る兄と何も出来ない妹

やがて何をするのも馬鹿馬鹿しくなってきた妹はいつも兄の後ろに隠れて逃げるようになった。
兄は妹を溺愛していて妹が何を言われても必ず助けていましたから


そんな中、世界に危機が訪れました
世界にはまるで破滅を警鐘する転変地異が世界を暗雲のうちに包み、
黒い星が世界と重なったのです。


その世界を救える唯一の存在が一人では何もできない妹のほかならなかったのです。


そう、それはとても悲しくて届かない世界のお話


「何の話してるんだ?」
「うーん。わかんない?」

ダングレストから出、ペースを落とすことなく早歩きで横並びのエルはただにっこりと微笑むと他人事のようにそう答えた。
分からなかったわけじゃなく、答え方が分からなかっただけだった。
ただ、頭に浮かんだことをぽつりと吐いたに過ぎないその言葉はユーリに拾われなければただの独り言で終わっていたとエルは思う。

先頭を行く、カロルとエステルの背中を追いながらユーリは思い出したように聞いた。

「お前、本当に一緒に来てよかったのか?」
「なんで?」
「俺たちと来るといろいろ面倒だぞ」

今まで何回も面倒ごと、それこそ命にかかわることがあったからこその気遣いだった。

「それは分かってるけど、ね。なんとなく気になるの」
「ほー」
「世界の毒」
「……」
「私とエステルがそう呼ばれた理由をね。たぶん、魔導器なしで魔術を使えるからだろうけど。その言葉の真意を知りたい。それだけかな?」
「それだけ、ね」

喉に突っかかって出なかったもの。
不意に自分のズボンのポケットに手を突っ込んだ。
見えないものの、そこには隣で気丈に振舞う少女のもっとも大切としていたものがある。

「お前、本当にそれだけか?」
「ん?」
「んや、こっちの話。なんだっけ?その届かない世界の話だっけ?」

それは作家である少女が言葉で綴った、詩のような一言。

「そんなこといってた?」
「お前、たった数分も記憶持たないんじゃそろそろあぶねぇぞ」
「確かに」

とエルが苦笑いをしたところ、急に先頭を行くカロルを向いてただぽつりとつぶやいた。

「私は何も出来なくはないと思うわ」
「?」
「ううん、今のお話。とっても昔のお話を題材にしたものなの」

エルはつぶやき、紅い夕日が世界の半分を占めた空を見上げた。
その表情はとても悲しく今にでも消えてしまいそうなものであった。






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