信じること

「……っ」


鼓膜が張り裂けそうな爆発音を聞いたのは何度目になるだろうか。
私たちを狙ったはずの砲撃は勘のするどいラピードのおかげで何とか避けられている。
元々、山の頂上から私たちを狙うのは地上から銃で鳥を撃ち落すことと一緒で難しいことだろうけど、近づくにつれて精度は上がってきているのだから。
しびれを切らしたのだろう、騎士団の本隊が降りてきたらしく、一本道を駆け下りてくる。

「親衛隊だ……!」
「……!向こうからも!」
「挟み撃ち!?」
「……こりゃ踏ん張っていかないとな!」

私たちが登ってきた道からも騎士が向かってくる。
チャクラムを抜くと、エアルを充填し、後方から来た騎士に投げる。

チャクラムは騎士の槍にはじき落とされ地面に突き刺さるが、かまわない。
杖で追加の術式を描くと、エアルが爆発をし、地面をえぐる。
小粒となった岩がはじかれ、宙に舞う。
反射として体をくねらせた騎士の懐にユーリが飛び込む。

「……あぶ」
「戦迅狼破!」

あぶない、といいかけた私の言葉も聴くことなく、ユーリは衝撃波で騎士を吹き飛ばす。
カロルも体を軸にして斧を振り回しながらこちらに来るが、それは敵に当るかも怪しい攻撃だった。
それのフォローに回るリタ。
続くジュディス。
私が後ろを振り向くとレイヴンたちはすでに騎士を倒したようで、騎士が転がっている。
勝敗は言うまでもなかった。
ユーリは息を整えながら辺りを見渡す。

「全員片付けたか……?」
「……パティ!」
「あ!」

気がついたのは、ユーリが剣を振り上げたときだった。
仲間の動きを見つめていたパティに向かって急に立ち上がった騎士の槍が襲い掛かっているところだった。
ユーリの技、蒼破刃の衝撃破が騎士を凪ぐ。

「ぼうっとしてんなよ」
「ユーリ、すまないのじゃ……」
「やっぱりパティちゃん。船でやすんでいた方がいいんじゃない?」
「……じゃの。これしきの戦いでこんな風に足を引っ張るくらいなら……やっぱり」
「パティはそれでいいの?」
「え?」

心にもないことを言ってる。
そんなことはお見通しだ。
リタが「ああ」と何をいらいらしているか、地面をけり鳴らし、パティに詰め言う。

「ここまで来て、くじくじ悩んでるんじゃないわよ!もうとっくに仲間なんだから、気にすんなって言ったでしょ!」
「仲間って……」
「珍しいこと言うわね、リタが」
「そうだね、リタがね」

私が念を押すように言うと、リタは怒りかそれとも恥ずかしいのか顔を真っ赤にして「う、うるさい!」とみなに突っかかる。
私には殴りかかってきそうな勢いなので、ジュディスの裏に隠れておく。
なんとか視界から隠れた私だけども、カロルはひどい目にあったらしい。

「ほ、ほら、早くあの兵装魔導器を止めにいくわよ!」
「はいはい、そういうことらしいわよ」
「仲間……」
「気にする必要ないってよ。レイヴンだって、なんやかんやでついてきてるじゃない」
「それを言うならエルちゃんもじゃない?」

「ジュディス?」と私は彼女を見上げる。
急に私の腕を取って歩き出す。
パティの事を置いていってもいいの?そう声をかけようとしたけど、ジュディスはただ笑って私の手を引くだけ。
「仲間」そんな一言をうれしそうにつぶやくパティ。
余計なことは言わなくてもよかったんだ。
ジュディスは本当に他人への気遣いも、接し方も分かっている。
そんな彼女がとてもうらやましい。



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