夢の間

赤く点滅する夕日をワタシはぼやっと眺めていた。
地面は紅の煉瓦なのだろうけど、それは煉瓦と言うより石に近い。
ワタシは靴の先で石を鳴らすとまた赤い瞬きをじっと見、そして深いためいきをついた。
どこかの屋敷のテラス席か?銀の柵に手をつけて感慨深く、テラスの下に映る照明の光を目で追う。

「相変わらず……ごちゃごちゃした街なんだね」
「仕方がないわ。そういうところなんだももの」

影か掛かっていて表情の読めない女性が私の呟きにくすくすと笑いながら答えた。
鉄?いや銀の鎧をまとった騎士風の女性、彼女はワタシと親しげに横に並び、言葉を交わしている。

「上の石頭どもには何を言っても無駄のようね……あんなものを作って」
「それで、あなたはどうするの?」
「先に言うけど、止めたって無駄だよ。レムもシャドウも同じことを言っている。私はあそこにいくわ」

そういってワタシは空を仰ぐ。
騎士風の女性はさもおかしいといった様子でくすくすと腹を抱えて笑う。
不服そうにじっとそれを見た私を察して背中をたたいて「ごめんごめん」などとまた笑いだす。

「そうね、あなたの言うとおりだわね。よっし、あたしもがんばるかな」
「……何を」
「ひとつ世界のためってやつね。だって面白そうじゃないって」
「私、あなたみたく笑えないわ」
「見習いなさいよ、まったく」

とわしゃわしゃとワタシの頭をなでる女性。
髪の毛を直しながらまた空を眺めるワタシ。
そして映ったのはワタシが向かうといっていたもの。
星とそれに這う蛇のような黒雲の塊。

『なに、あれ』


ぶつりと私の意識はそこで途切れる。


「ほら、起きなさいよ」
「なにー……?」
「何じゃないわよ、起きて。いい加減バカたちが帰ってくるでしょ。いなかったらまぁた、文句言われるに決まっているじゃない」
「……そんなことより、私に気をかけてくれないわけ?」

私はリタが私用にも使っている研究所で私は本を抱えながら意識を失っていた。
頭にはヘルメットにも似ている触角のようなものがついたリタいわく魔導器で、エアルの性質を図るものらしいけどそれを装着してリタが電源を入れた瞬間、体に電気が走り私の体は跳ね上がりそして床にバタンだ。
リタがまず言うべきなのは「ごめーん。生きてる?」じゃなくて「ごめんなさい」なのに。
魔導器をはずした私は書類片手で出立の準備をしているリタの横に並ぶ。

「で、結果はどうなの?……うわ」
「あんたはこれを解読できるなら頼むわ」
「いや……いい」

リタが目を通している書類に並んでいるのは数字だけで、読めといわれても数字を口にするしかない。
私も自分の荷物をまとめると本棚から何冊かの本を拝借し、バックに詰めた。

「これから計算をするわ。まぁ、あたしも忙しいしいつになるかわからないけど期待せずにまっていてよ」
「苦行を強いといてそれはないよね」
「ほら、とっとと出なさいー。鍵閉めるわよ」

さっさと支度を済ましたリタが扉の前でだんだん靴を鳴らしながら私を呼ぶ。
なんだろう、この扱いは。
見慣れた夢と、しびれた体の感覚でうまく立ち上がれなかったけどなんとかリタについていく。
ユーリたちはミョルゾのことを調べられただろうか。




「お帰り、ってなんで一人やつれてんだよ」
「……あら、早かったのね。今日は無理かと思ったのに」
「僕たちだってやればできるの」

リタの家にはミョルゾの情報を探しに出ていたユーリたち凛々の明星はもう帰ってきていて、早々に私の変わり果てた姿(大げさかもしれない)を見るとジュディスは苦笑いで私の肩を支える。
ここに帰ってくるまでにリタは「仕方ないわね」と引きずってもらってきたけどもう限界だ。

「お前、大丈夫か?」
「みんなのいないところでリタにしばかれてたの」
「ほー。リタなにやってんだよ」
「違うわよ。失礼ね!」

リタが隠したい事情があるのだから、それを追求するのはどうだろうと私は口を閉ざす。
体のビリビリは残っているけど辛いって言うほどでもない。
エステルは場を持ち直すように「何かわかりました?」と凛々の明星に向かって言う。

「エゴソーの森ってところに手がかりがあるみたいだぜ」
「ここから南の大陸のピピオニアの南の方だったと思うよ」
「……本当に情報が見つかったんだね」

ジュディスの言葉を信じてなかったわけじゃないけどこんな少しの時間で見つけられるとは。
それに場所まで特定できるなんて。
後で何があったか聞いてみよう。

「で、その森にミョルゾの何かあるの?」
「扉があるのよ」
「はぁ?扉?なにそれ?」

たぶん、私もリタも同じ想像をしたと思う。
森の中に部屋にあるような木の扉があってそれを開けるとミョルゾにいけるーみたいな。
そんなことはありえないと不信感をあらわにする私たちにユーリまでも「ミョルゾに繋がる扉だとさ」なんて解決にもならない言葉を口にする。

「……その扉を開ける鐘がピピオニア大陸の赤い花が咲く岸辺の洞窟に隠されてるんだって」
「……とりあえず行ってみたほうが早い」
「なんか、その話」
「エルどうしたの?」
「前に、どっかで読んだことあるようなってー。よくあるヲタ話ってやつじゃないの?」
「でも、フェローのときと一緒。火のないところに煙は立たないっていうじゃない」

フェローを追って砂漠に行ったときただ赤い鳥が飛来するなんて話だったけど半信半疑で行ってみたら実際の話だってこともあった。
カロルが肩の力を抜いて壁に寄りかかり瞼をこすり「その前に……休ませて」と眠りに入る。
「だってさ」とユーリが肩をすくめる。
そういえば、みんなアスピオに来てから休みもとらないで調べてくれていたんだよね。

「一休みしてから出発かしら」
「だってさ」
「しょうがないなぁ」
「リタ、私も休みたいんだけど」
「……仕方ないわねぇ」

とぱっぱとリタは部屋の奥から布団を探しに行くので私も手伝いに行く。
明日からまた忙しくなるんだろうなーと私は長いため息をつく。


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -