学術都市アスピオ

花の街から東。
海に住む穴子は暗く細長い巣を作るというけど。似てるな。
というのが私の感想。
穴に隠れ住むアスピオの街。
暗い洞窟の入り口を抜けると、魔導器の淡い光が蛍のように浮かび上がる。
岩をくり貫いて出来た建物は民家ではなく帝国直属の研究施設だとリタが教えてくれた。
いまさらかもしれないけど、リタの家はアスピオにあってユーリたちとの出会いは魔核泥棒を追ったアスピオらしい。
アスピオの街は基本的に帝国直属の魔導士しか出入りの許可は下りないという。
と、私が始めてくるアスピオのことをリタはつまらなさそうに私に説明をしてくれた。
リタと私は横並びになって、アスピオの中央にある研究施設に向かっている。

「ミョルゾかぁ……ユーリたち大丈夫かな」
「ジュディスがいるんだから問題ないっしょ。それより」
「家に残してきたエステルが心配?」
「当然でしょ。ってあんたもでしょ」
「……私は」

別に、と言葉を付け足すと、まるで無理しているかのようにリタはこれでもかと長いため息をついた。
私は腕を組んでそっぽをむくとリタは淡々と無視をして早足で歩き出す。

「あ、ちょっと待ってよリタ!」

リタを見失ってしまえば、私はこの薄暗いアスピオの街で迷子になってしまう。
ただでさえ視界も慣れなくて同じような建物しかないこの街は方向音痴という訳でもない私も道がよく分からない。
一人つぶやきモードに入っているリタの横につく。

「ねぇ、リタ」
「なに?」
「資料を取りに行くって言っても、何の?」
「ミョルゾのことに決まっているでしょ。あと、始祖の隷長のこと、あとはヘルメス式魔導器って考えればいっぱいあるじゃない」
「ミョルゾね……」

アレからフィエルティア号で皆話あってジュディスはフェローが言った「罪を償うもの」はミョルゾという都市に住むクリティア族の事じゃないかといった。
ミョルゾは特別な方法でしかいけなく、その都市へと導くものがこのアスピオに居るという。
早速アスピオに来るとカロルが自分の意思を口にした。
それは凛々の明星の首領として自ら一人の力でラゴウに手を下したユーリと仲間を危険にさらしたジュディスに下した罰だった。

「皆で罰を受ける。か、私も受けるべきかな」
「はぁ?何よ急に」

どうすればいいかわからないからこそ、最初からやり直す。
だからカロルもみんな罰を受ける。
その一歩として私たちが休んでいる間にミョルゾの情報を集めに行くと出て行ってしまった。
エステルとレイヴン、パティはリタの家で休んでいる。
私もお茶を出そうとしたらリタがわざわざ私に声を掛けていただいて資料を探しに行く、それだけだった。

「あいつらはあいつらにやらせりゃいいでしょ。あんたは別になんかしたわけじゃないんだから」
「……」
「まさかアンタも変なこと言い出したりしないわよね」
「…ミョルゾに行かなきゃだめかな」
「………」

私はこれまでユーリたちと旅を続けたのは自分のことを知るためだったのに、それが少し怖い。
知っているような気がする。
そこに行けばすべてが繋がるような気がして。
手を伸ばしても望んだものなのにいざ少しでも触れると手を引っ込めてしまう。

「あんたがとやかく言おうがあたしは張り倒してでも連れて行くわよ」
「どうしよう、あんまりうれしくない」
「……エステリーゼに偉いこと言うならあんたも覚悟決めなさいよ。あたしはともかくね、凛々の明星の連中は帝国のお姫様だってあんな態度を取んのよ。あんたが誰だって接し方を変えたりなんかしないわよ」
「そう……だね」

きっとユーリならそうだと思う。
自分が気負いすぎているのか、思い出すのが苦いのか。
レムとか、ゼグンデュウス、彼女らが普通の人間じゃないといってるのだから。

「しっかりしなさいよ。あんたも」
「……私、説教されるために呼ばれたのかな」
「違うわよ。心外ね。……フェローが言ってたでしょ。あんたが魔術、治癒術を使うとエアルから別のエネルギーにかわるって。それを調べてみようと思って」
「もしかして、何か知っている」
「学者の間では前から言われてきたんだけど、マナっていうのよ。エアルよりは物質に近いものっていうのかしら」
「マナ……ね」
「だから少し調べて見るのよ。ちょっと協力しないさいよね」
「うん……」

聞いた覚えもない言葉に専門知識も持たない私はリタの適当な説明をうんうんとだけ聞いていた。
リタに連れられ向かうのは研究室、リタが言うにはユーリたちが帰ってくるまでに戻れるというのだけど。




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