興味
「あーあ。嫌な感じね」
「お前、人のこと売り渡そうとしたくせに」
「あれ?私はあの人たちに事実しか伝えてないけど」
「自分の調子の悪いところは隠して、だろ?」
「そうかもね」と苦笑いを浮かべるとユーリは「仕方ねぇやつ」と笑った。
私は一回でも彼らにユーリがやったことを伝えていないし一言も証言した覚えは無い。
「リタ?」
「あんたたち、これでよかったの?」
リタが言いたいことは分かっている。
エステリーゼがこのまま帝都に強制送還されること。
「選ぶのは俺じゃないだろ」
「私はよかったと思うけど」
帝国の姫ということだけで旅で危険を味わうことだってある。
そもそもエステリーゼの目的がフレンに危険を伝えることならもうそれは済んでいるはずだし。
リタが気に入らないというのも分かる。
それは私の心の隅に少し残るものそれはエステルに対しての「興味」
リタとエステルがどんな出会いをしたかは知らないけど見てて分かる。
それは魔導器以上に魔導器を使わずに魔法を発動できる。
それに何かを見出したからエステルについて回っている。
「エステルが気になるってんならお前も帝都に行けばいいだろ。アスピオの天才魔導師様なら、城の連中だって無下に扱わねぇだろ」
「まぁ、そうね。ただ」
「なんだよ」
「なんでもない」
とそっぽを向いてしまうリタ。
これ以上は話す気が無いのであれば言及しても無駄か。
「ユーリはこれからどうするの?」
「魔核泥棒を捜すんだよね?やっぱり目当ては紅い絆傭兵団?」
私の言葉を継いだカロル。
ユーリはうなずくと
「今のところはな」
「だったらギルドの街ダングレストに……」
此処から近いギルドの中心ともいえる街ダングレスト。
その守備は五大ギルドの一つ天を射る矢が行っておりその首領のドン・ホワイトホースがギルドユニオンのトップを勤めている。
紅い絆傭兵団の情報はユニオンにたずねればそれなりに仕入れることも出来るかもしれないが。
言いかけたカロル自身が口をつぐんだ。
「あ……でも僕はだめだ。今戻ったらみんなに馬鹿にされる……」
「あ?」
「な、なんでもない。こっちの話」
「私は」
もし彼らがダングレストに来るのだったらそれまでに別れなければならない気がする。
今更隠しても無駄かもしれないけど、最期まで気を抜いてはいけないのが私の仕事なのだから。
「んー……」
「ねぇ、なんか揺れてない?」
私が「帰る」と言いかけた時に足元が揺れた。
地震といわけではない。
「そういえばさっきの騎士たちが言ってたね。何でも結界魔導器の調子がおかしいんだって」
「え?」
「リタちょっと待った」
魔導器のことになると周りが見えなくなるのか。
走り出そうとしたリタの手首を掴んだ。
「何よ!」
「何でも騎士団のほうで手配をしているらしいから。今日はリタの出番ないかもよ」
「はぁ?」
「たまには騎士団の面子も立ててやれ」
「分かったわよ」
と手を振り払うリタ。
それは聞き入れたと言う様子もない。
「でも、ま。気になるよね」
と、なんとなく空を見上げたときにその異変に気づいた。
空に掛かる結界魔導器の光の輪が消えていた。
それはありえない現象だった。
とたん、まるでバネのように地面が跳ね上がった。
「なっ!」
なんとか杖をつきバランスと保つ。
そして空に立ち込めるのは緑の光の柱、それは結界魔導器から放たれたものだった。
町中耳が裂けるような爆発音が響いたのはその直後だった。