下町の騒音


毎日、毎日うんざりだ。
今日も朝目を覚ましてみりゃ、また何か騒ぎがあったらしく、この帝都ザーフィアスの下町は騒がしい。
おとといはなんだったか、そうだ確か宿屋の客と騎士団がもみ合っていたのを仲裁したっけな。
そして昨日は税の徴収に来た騎士を一発ぶんなぐったけか?
下町の騒ぎには毎日、毎日騎士団の連中が絡んでくる。
もともと騒がしいとことだってのに。
このままじゃ寝不足は確実だ。
そういや、昨日騎士団に怖気づかない少女がいたっけ。
薄い金色の長い髪は天然なのかくるくるとパーマが掛かっていて、まるで宝石のような紫の瞳。
そして学者風の長いコートに古い文字のような刺繍が施された白いワンピースにロングブーツ。
それにとても顔が整っていて美人だなと人目で思った。
それと同時にこの下町の人間ではないということも。
しまった、失敗した。
せっかく助けたんだから声を掛けとくべきだったなんていまさら思いなおしても仕方ない。
まぁ、そうしときゃこんな憂鬱な気分には今現在陥ってなかっただろうに。

「ユーリー!!!」


ばたばたとしたから駆け上がってくる声が聞こえてため息をついた。
まぁ、窓から見ていたから来ることは大体予想はしていたんだけどな。

「でかい声出してどうしたんだ。テッド」
「あれ、ほら水道魔導器がまた壊れちゃったんだよ。さっき修理してもらったばっかりなのに」

テッドの視線を探ると広場にある噴水の方に人が集まっていくのが見える。
そしてかすかにだが、家の屋根ほどまでに水柱が上がっているのが見える。

「何だよ。厄介ごとなら騎士団に任しておけって。そのためにいんだから」
「下町のために動いちゃくれないよ。騎士団なんか」


そうだよな。
昨日の事を見る限り、壊れた魔導器も見もしないで店ぶっ壊してたもんな。

「世話好きのフレンがいんだろ」

見知った騎士の名前を挙げればテッドは表情は曇らした。
騎士団の中で唯一はなしの分かるやつでこれだけの事がおきりゃすぐにでも飛んできそうなやつなんだけどな。

「もうフレンには頼みにいったよ。でも会わせてもらえなかったの」
「はぁ?俺はフレンの代わりか?」
「いいから早く来て!人手が足りないんだ」

まるでぶつけるように言い放つと、テッドの母親がしたから呼んでいて、しぶしぶとしたに降りていってしまった。
フレンはこの下町出身の騎士であり幼馴染みたいな存在だ。
家が近いとか学校が一緒だとかそんなんじゃなくてただ小さいころ遊んだりその程度だった。
ひょんなことから騎士団で再会したんだっけな。

静かになってから再び窓から下を見ると広場からあふれ出た水がまるで洪水があったかのように少しはなれた宿屋の一本道まで浸水している。

「あの調子じゃ、魚しか住めない街になっちまうな。起きているか、ラピード」

部屋の隅の寝床に向かって声を掛けると耳をピクリと立ててゆっくり起き上がるラピード。
立派な名前がついているが人間ではない。
そろそろ4歳半になる、雄犬。
俺の相棒みたいなもんだ。

「なら行きますか」

出口に立てかけていた剣を手に取るとその鞘につけた紐を腕に巻いた。
わざわざ一階まで行くのはたるい、もとい宿主に昼近くまで寝ていたことにいやみのひとつでも言われそうだったので2階の窓から飛び降りた。



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