本日も晴天なりっと。

出会い、そして世界の始まり

テリカ・リュミレースは今日も照りつけるような暑さだった。
帝都ザーフィアス。
この世界を牛耳る、もとい支配する帝国のお膝元である帝都は剣を掲げた結界魔導器が城の中心から伸びでたようになっている。
城を中心とし、四方に渡って人々はひしめき合って生活する大都市でもあった。

「はぁー。広いなぁ」

と一息ついてバックから水のボトルを取り出し、栓を開け口に含む。
横に振ってみれば小さな水音が聞こえる。
それは中身がごく少量だということを示していた。

私がいるのはこの帝都の市街地付近に過ぎない。
市街地から貴族の住む貴族街につながってはいるがそこからは帝国の軍隊ともいえる騎士団が目を光らしており一般人は立ち入れないようになっている。
大体、この帝都の市街地も国が認めた人間でしか全うな生活ができないといわれている。
市街地に住めないものは隅へ隅へと追いやられて下町にたどり着くといっていた。
下町といっても家も店もあってキチンと人々が生活を営んでいる。
ただ結界魔導器にもしも何かあれば一番に被害を受けるのには違いない。
と前に帝国の下町出身の人に話を聞いた
とにかく、私は帝国に着いたばかりで今は今日の宿の確保といろいろ調達しなくちゃいけない。
店はこの市街地にあるからいいが、結界の外から来た旅人を歓迎してくれる人はあまりいない。
結局は私もその下町で宿屋を探さなきゃいけないのだ。

だからせっかく観光がてら有名な剣の結界魔導器を近くで見てみたいとわざわざ足を運んだが戻る羽目になった。

「宿屋、やどやね……」

石造りの丈夫でそして歴史を感じるぐらい古い町並みを抜けながら私は宿屋の看板を探す。
さっきからすれ違うのは鬼ごっこをしてる元気で無垢そうな子供たちと店の宣伝をするおじさんの声。
そして香ばしい焼きたてパンのにおい。
さっきの話を聞く限り、帝国の下町は貧民外(スラム)みたいなものだろうかと想像していた自分が思わず恥ずかしくなるような話だった。
思っていたよりも治安は悪くなさそうだし、住みやすそうなところだと、関心していたときだった。

べちゃっと何かを壁に叩きつけるような音とともに聞こえたのは罵声と人の叫び声だった。

「なに?」

一本道の先で集まる人影。
私は様子を伺いながらゆっくりと近づいた。

「約束と違うだろう!」

ざわざわと雑音の中から聞こえのは意地の悪そうな男の声だった。
数十人の野次馬の中に混ざってその中を覗くと引っ掻き回された果物屋さんとおびえたようにあたりを見渡す女将さん。
そして白銀の甲冑に二股に割れたマントを羽織る二人組みの騎士の姿だった。

「税の徴収は本来先週までだったはずだ」
「納税を怠った罰としてこの店のものは全部帝国騎士団が没収する」
「お、お待ちください」

と、金庫箱や片っ端から店の商品を大きな麻袋に詰め始める騎士たち。

「まただよ……」
「でかい顔しやがって」
「お前いけよ」

と野次馬がこそこそと話をしているのが聞こえるが誰も手を出そうとはしない。
帝都の悪い噂がこれだ。
帝国騎士団の堕落っぷり。
いけばいやでも分かるといわれあまり聞きはしなかったが。
騎士団とは本来国の誇りと国民を守るために存在する軍隊のようなものだと聞いたのだが。

「あのう」
「あん?」

どちらかというとチンピラの方がまだ話は通じるだろうな。
心の中で嗤ってやった。
私は一歩前に出て、その騎士たちと震える女将さんの間に割ってはいる。

「私この町に着いたばっかりで宿屋を探してるんです。騎士さんならご存知ですよね。よかったら紹介してくれませんか?」
「何だと?我々は忙しいのだ」
「まぁ、待て」

と、いきなり剣を突きつけた男を片割れの騎士が制した。

「せっかくの美人さんだ。案内してやってもいいぜ?」

といやらしく笑って言う。
あぁ、こう言う誘いは無理なんだよなぁと服のしたに鳥肌が立っているのを察しながらお断りしますと首を横に振ると

「気持ち悪いです。大の大人がそういうの」

というといきなり表情を曇らせてつばを飛ばしながら怒鳴りつけてきた。

「貴様!帝国騎士団になんと言う侮辱を」
「いや、騎士団というかあなた個人にですけど」

目を伏せて言う。
なんでそっちに行くかな。

「この小娘が調子に乗りおって」

と近くのオレンジを手に取ると腕を振り上げた。
結局暴力に走るかと思いながら私はそれなりの覚悟をしたときだった。

「その辺にしときな。大人気ないぜ」

と低い声が響いた。
騎士の背後にまるで影と見間違えるような全身黒い青年が現れた。
胸元が開いている黒と紫を基調とした服に胸元まである黒い髪に同じく深みを感じる黒い瞳。
その男は騎士の二の腕を掴んでいる。

「美人を口説き落したいのならもっと別の方法を考えたらどうだ?」
「……ゆ、ユーリ?」

声を震わせながら私の後ろに座り込む女将さんがその男な名前を呼んだ。

「お前はまた邪魔をする気−−−!!!」

と騎士が言いかけたときにその男は間髪いれず顔面に痛いものをお見舞いした。
一発で伸びる騎士。

「な、貴様。あのユーリ・ローウェルだな。覚えておけよ」
「はいはい。忘れましたよっと」

騎士の片割れは伸びた仲間を回収すると麻袋を投げてその場から走って去っていく。
「二度とくるな!」「この体たらく!」など野次馬が声を掛けていく、なんともいやな光景だ。

「ありがとう、ユーリ」
「気にすんな」

女将さんは振るえながらただ感謝の言葉を伝える。
ユーリは騎士が投げ捨てた麻袋を回収すると女将さんの傍においてあげる。

「あなたもありがとう」
「いえ、ただ宿屋の場所を聞きたかっただけですから」

まぁ、目の前で泣いている人がいて無視はできないし。

「お嬢ちゃんも道を尋ねる相手を間違えたな」
「そうかな」

ユーリはこちらを見ると、首でこの先だと道を示す。

「あのメシはあまりうまかねぇけどサービスは悪くないぜ」
「そうですか、ありがとう」

と私は道に落ちた商品の林檎を3つ拾うと女将さんに金貨を手渡す。

「お腹空いていたんです。いただきますね」
「そんなものじゃなくてもきれいなのを出すよ?」
「いえ、洗えばおいしくいただけますから」

そしてバックにしまうとそれじゃあと一礼して歩き出す。

「あ、これネタになるかも」

と、一言呟いた。



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