宝を追い求める少女

「……」
「のじゃ」

ある一室を空けると、唖然としてしまった。
おかしなことに布団に包まれて天井からロープで吊るされた少女とぴったりと目を合わせた。
少女はさくじつ、このラゴウ邸に潜入した海賊風の少女だった。

「いーい。眺めなのじゃ」
「面白い」
「うん、面白いのじゃ」

小さく「そう」と返すしかなかった私。
少女は体を揺らして、宙に吊るされてぶんぶんと楽しんでるらしい。

「そこでなにしてんだ」

ユーリが私の隣に立って問うと少女は今度はユーリ私を見比べて。

「見てのとおり。高みの見物なのじゃ」
「ふーん、オレはてっきり捕まってるのかと思ったよ」
「あの、捕まってるんだと思いますよ?」

エステルの指摘に私たちは苦笑いを浮かべる。
しかし、本人の意見を尊重しよう。
敢えて何も言わないでおこう。

「お?お前たち、名前を知っているのじゃ。えーと。名前はジャックと」
「名乗ってないから」

ユーリを見てジャックといった、少女の言葉をさえぎる。
私にも適当な名前が宛がわれるようだったのだろう。「私はティアルエルだよ」
「ティアルエルか。どっかで聞いた名じゃの」
「俺はユーリだ。お前、名前は?」
「パティなのじゃ」
「パティ。この間屋敷の前で会ったよね?」
「おお、そうなのじゃ」

そうか、そうかと一人、納得しているパティを他所に私たちはパティの縄をチャクラムで切ってあげる。
そして布団から開放して、軽く背中についた埃を払ってあげる。

「ありがとう」
「いえいえ」
「それより、パティ。こんなところでなにをしていたの?」

カロルと背丈も年も同じくらい、並んでいるとまるで年の近い兄弟みたく見えてくる二人。

「お宝を探していたのじゃ」
「宝?こんなところに?」
「あの、道楽腹黒じじいのことだし、そういうのがめてても不思議じゃないけど」
「それはないんじゃないかなー。ほら、人の不幸と魔導器にしか興味ないっぽかったし」
「おー。リタと一緒だな」
「あんたたち、あんな変態とあたしを一緒にすんな」

と、リタの拳骨をすれすれで避ける。
カロルはそんな私たちを見ながら、肩をすくめたが重ねてパティに問う。

「パティはなにをしている人?」
「冒険家なのじゃ」

一気に空気が凍りついた。
いや、その冒険家が悪いわけじゃないけども。
冒険家といえばどっちかというと未開の大地を求める人だと思っていた。
登山愛好家の行き過ぎた人とか、海の航海を楽しんだりとか、世界七不思議を求めたりとか(ギルドの知り合いがしていたし)
それが何でこんな悪党の屋敷で宙ずりにされていたのか。

「まぁ、とにかく?パティ、ここは魔物も、人も危ないし。一緒に行こう?」
「うちは宝も何も見つけていないのじゃ」
「んー。じゃあそこに飾ってある絵画とか?あと変な甲冑とかは?」
「あれは違うのじゃ」

私が部屋の中にあるものを適当に指して言うが、パティは首を横に振って話を聞こうともしない。
あれらだって、普通の市民にとっては手の出せないお宝に違いないのに。

「ま、まだ宝探しをするってんなら止めないけどな」
「ね、パティ」

と、私が膝を折って、彼女の手を取った瞬間。
ぐおん、とよく分からない魔物の声が近くの部屋からかすかに聞こえた。
それに気づいたのは私とパティと、そしてユーリだろう。

「たぶん、この屋敷にはもうお宝はないのじゃ」

汗ばんだ手で握り返してくる少女に思わず、微笑を漏らした。

「一緒に来るってさ」
「それじゃあいくか」

あっさりと次の部屋の扉を開けて出て行ってしまった、ユーリの後を追う。

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -