プロローグ

本当にいいのだろうか
そう思い返す時間は自分にはなかった。
曇天のように黒く光を指さない空を見上げてみれば、私の中に少しだけ絶望が生まれる。
心は穏やかなようで本当は誰よりも不安で仕方なかった。
心臓を鷲づかみにするように胸に手を当ててみると、それは自分の体全体に早すぎる鼓動が伝わっていた。
きっと私は怖かったに違いない。
でもそれを意識したときにはもう返れない場所にいた。
私は腰に挿したレイピアをぎゅっと握り締めた。

「大丈夫?」

私の汗をもともとぬれていたハンカチでぬぐう。
私ともっとも近いヒト

「大丈夫だよ、兄さん。お兄さんこそ手が震えているよ」

まさかと、分かってそんなこなわけがないと自負する兄さんを見て私の心はすごく落ち着いていた。
誰もこんな私たちに世界の命運が掛かっているなんて想像もしないだろうに。

「それにしても本当によかったのかい?」
「なに?」
「ここに来てしまって」
「それはお兄さんも一緒でしょ。みんな言っていたじゃない。私一人で十分だって」
「それは違うだろう」
「それにお兄さん言っていたじゃない。ヒトの心を動かすのは言葉じゃないって。私もそろそろ自分で決めたいのよ」

もちろん死ぬつもりなんてない。
私にだって夢や希望がある。
最初独りで向かうことになったときは誰かに
押し付けられたようで悲しくなったけど
お兄さんが一緒に来てくれるって言ってくれたから
私は自分に自身を持っていける。

「それじゃあ、行こうか」
「うん」

そういって私たちは光ささないその建物へと入っていった。
私たちが揃ってそこから帰還できることは永遠になかったとしても

私たちには確信というもうひとつの武器があったから


カゼノネ
 (そこから始まった、私の戦い)


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