邂逅、そして疑惑



「大丈夫か?ユーリ」
「フレン!それ、俺のセリフだろ」

暗殺者を追って来てみれば、此処に居てというフレン。
暗殺者の目標はてっきりフレンとばかり思っていた私は目の前に居る人物に少し眉を寄せた。

裏路地の先に居たのは1人増えて3人の暗殺者に襲われる、ユーリの姿だった。
思っていたよりもぜんぜん早い到着に私たちは驚きを隠せなかったが、フレンは暗殺者3人に狙われたユーリの助けに入る。

「まったく、捜したぞ」
「それも俺の台詞だ!」

2人の剣術はそれはまったく似ているものでまるで鏡で合わせたような剣さばきに見ほれていた。
やがて一人、二人と暗殺者をなぎ払い、そして最後の一人は仲間を残して退散した。

「マジで焦った。助かったぜ、フレ――」
「貫け、雷!サンダースピア!!」
「うぉ!!」

親友との再会を喜ぶ隙を与えた無かった。
無粋だと思ったが、忘れられても困るので、此処は一撃っと。
私は雷撃をわざと避けられるように放った。

「ちっ……」
「エル?なんでお前此処に、それよりフレン!」

と、三度親友の名を呼ぼうとした刹那、次はフレンの重い斬撃がユーリを襲う。
咄嗟に抜き身の剣でそれを受け止める。
フレンはそれに打ち付けるように、何度も言葉と共にユーリにそれをぶつける。

「ユーリが結界の外へ旅立ってくれたことは嬉しく思っている!」
「なら素直に喜べよ!剣なんて振り回さないで」
「これを見て素直に喜ぶ気がうせた」


そういってフレンが剣の先を向けたのは路地の張り紙。
そこにはハルルと同様の人間とは識別しがたいユーリの手配書だった。

「あ、10000ガルドに上がった。やり」
「さっきのガ当たっていたら10000ガルドかあ」
「お前……」

惜しかったなぁとため息を漏らすと、じと目でこちらを睨むユーリ。
このどうにも緊張の沸かない空気にフレンが痺れを切らしたらしい。

「騎士団を辞めたのは犯罪者になるためじゃないだろう」
「いろいろ事情があったんだよ。な」

こっちに助けを求めているようだが、わざと目をそらした。
私はここまでいたる経緯は知らないし、懸賞金が倍額になっているということは私が知らないところでまた騎士団と揉めたのだろうから。

「事情があったとしても罪は罪だ!」
「ったく、相変わらず頭の固いやつ……あっ!」

と、私たちは来た方向を首で示す。
つられて私たちが見るとそこには、懐かしいお嬢様の姿があった。

「エステリーゼ?」
「エル!お久しぶりで……!」

と、エステルは私にお辞儀をしようとしたときにおくに居た探し人と目が合った。

「フレン!」
「え?あ、エステリーゼ様」

予期せぬ来訪者にフレンは目を丸くしている。
そんな彼をよそにぺたぺたと体中を触りながらフレンの身を案じるエステル。

「よかった。フレン。無事だったんですね?怪我とかしてませんか?」
「していませんから、その。エステリーゼ様」

戸惑いを隠せない、フレン。
直後何か、思い出したようにエステルの手を掴む。

「あぁ、こちらに」
「え?ちょっとフレン?」

そのまま連行されていくエステル。
その慌しい光景を醒めた感じで見ていると、ユーリが剣を鞘に収めるとこちらを見る。

「お前、なんでフレンと居るんだよ」
「かくかくしかじか」
「お前なあ」
「あー!!ユーリ。どこに行ってたの!!」

と、手を振ってこちらに向かってきたのはユーリの相棒のラピードと、そして見覚えのない少年と少女。
少年の方は短い茶髪を立てて、肩からは大きな鞄を提げている。
身長はユーリの腰くらいまでしかないだろう。
そして少女は赤い短いスカートに黒と、白、オレンジといったカラフルな線が入った服に同じく薄い茶色の髪。
額には特徴的なゴーグルをつけている。
少女は手を組みながらこちらに来るや否や鼻を鳴らして言った。

「ちょっと。エステルが騎士に連れて行かれたけどいいのって……あんた誰?」

きびきびとした口調で話す少女。
私?と自分に指差すと他に誰が居るのよと短く切られる。

「んー。そちらこそ?なにユーリの弟?」
「え?ぼ、僕?」
「似てるか?俺ら」
「うん、とっても。で、こちら様が妹と?」
「誰がこいつの妹よ。こんなのが兄だったら死んだほうがましだわ」
「確かに」
「お前な……」

額に手を当てて呆れ気味なユーリ。

「私はエル。ユーリに誘拐をされた」
「あぁ、手配書にあった?」
「うん、それ」

それで納得されるならそれでいいかも知れない。
手配書に私が誘拐されたと書かれていたのは事実だし。

「えっと?よく分からないけど僕はカロル・カペル。よろしく」
「よろしくね」

と、握手を交わす。
カロルは?どこかで聞いた覚えのある名前だけど、どうも他人の名前を覚えるのは苦手で。

「で?そっちは」
「リタよ」
「そう、よろしくね」
「お前ら普通に挨拶してるけどな……」
「んー。ユーリ。エステルはいいの?」

足元に擦り寄る、ラピードをなでながらユーリに問うと、そうだったなあとうなずく。

「たぶん、宿屋に部屋を取っているからそこじゃないかな。まぁ、積もる話もあるようだったし」
「じゃあしばらくは行かないほうがいいのかな?」
「だろうな」
「僕はアイテムの補充とか行って来るよ」
「あたしも行くわ」
「えー。リタも?」
「えーってなによ。あんたに任しておいたら無駄遣いするに決まってるじゃない」
「いたっ」

とリタの拳骨がカロルを襲う。
行くわよと声を掛けるとしぶしぶ後を追う。
それを見送るユーリ。
私はその隙を縫って、その場から立ち去った。
はずなのに、ユーリは何も言わないまま、私の後を追ってきた。
私は自分のペースを崩さないままそのまま歩き続けた。




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