巨大楼閣ガスファロスト


「頼む!」
「ちょっと!」

これは俺の責任だった。
俺が馬鹿をしてエルが俺を救うために自分からバルボスに突っ込んでいって、そして捕まった。
バルボスのみぞうちを暗い苦しそうに意識を手放して、そのまま連れ去られた。
バルボスが他の魔核同様、彼女の特殊な魔核にも興味をしめしていたことを知っていながら。
宙を飛んで逃げるといったバルボスの芸当を追うように竜使いは再び、宙を舞おうとしたとき、俺は、呼び止めた。

「やつを追うなら一緒に頼む!こっちは羽の生えたやつがいないんでね」
「ちょっとあんた、何言ってんのよ」
「俺はなんとしてもヤツを捕まえなきゃならねぇ。それにあいつを頼まれたんでね」

全身鎧に身を包んでいるけども声は聞こえているようだ。
声を低くして言うと、竜はゆっくりとこちらに接近し、飛び乗れる場所まで着けた。

「助かる!」
「待って!僕たちも……!」
「こりゃあどうみても定員オーバーだ!」

俺が竜の後ろに飛び乗る。
二人、以上乗れる様子はない、ふかふかとした体の上は思っていたより座れる箇所がない。

「でも」
「お前らは留守番してろ!ちょっと迷子連れ戻してくっから」
「そんな!」
「ちゃんと歯磨いて街の連中に迷惑かけんなよ!」

と指差して言うと、竜はふわりと飛び上がった。

「ユーリのばかぁ!」

カロルの声がとても遠く聞こえた。
竜は一気に飛び上がると雲がとても近くに感じた。
向かい風が体を打つ。
最初見たときはずいぶん便利な移動手段かと思ったけどそうでもないようだった。

バルボスの姿はもうないが、迷いなく竜が進んでいく。

「やつらの行き先、分かってるのか?」
「……」

返事はない。
ただ馴れ合う気もないらしい。
やがて見えて来たのは要塞のような塔だった。
そこから荒れ果てる空気、要塞の頂上から吹きすさぶ風、そして竜は向かうのは頂上にある巨大な魔導器。
その魔導器の周りに生き物のように竜巻が縦横無尽に駆けている。
竜はなんとか体勢を立て直しながら突進していく。

「!!」

そして竜が炎の息を吐くとともに風を打ち消す。
その一瞬で竜使いの槍が鋭く竜巻を発生させた魔導器の魔核を貫いた。
竜巻が消え、風に阻まれることなく動けるようになってから、竜が再び空に高く飛び上がり、要塞の頂上部分に再び降りた。

そして下から大声が響く

「貴様ら!魔導器を破壊しおって!」

バルボスの声だった。
大剣を構え、人薙ぎすると風が発生した。

「許さんぞ!」

バルボスが剣を薙ぐたびに強固な鉄をも真っ二つにする衝撃破が生まれる。
何とかよける竜だが、横からさらに、あの火の弾を打ち出す魔導器で攻撃をするバルボスの部下、その火の弾がひとつ、竜の左半身に直撃した。
体勢が崩れ、揺らめく竜。

「っ!」

俺は地面に着地し、剣を抜いた。
充填してる間に一気に間合いをつめて、俺はバルボスの部下を一閃する。
しかし、対岸の塔にはもう一人、魔導器であの竜を攻撃する。
空から鈍い音を立てて落ちてくる鉄の塊。
それは竜使いだった。
竜も火の攻撃をよけるのが精一杯らしい。
先ほど受けた傷もあるのだろう。

俺は助走をつけて一気に塔を飛び、部下をもう一人、始末する。

「ふん!」
「?!」

バルボスがもう一度剣を振り上げる。
すると、剣にはめ込まれた、水道魔導器の魔核が怪しい色を放った。

「ぐあっ!」

すると、砂嵐とともにすさまじい風が俺と竜使いを巻き込んで、吹きすさむ。
体が浮いて壁に打ち付けられて、血を吐きそうな全身の痛みが走る。

「はっ、いいさまだな」

俺たちを見下ろして黄ばんだ歯を見せ、笑うバルボス。
体は自由が利かず、うめくような声しか出ない。

「減らず口もここまでだ。貴様にはあとで惨めったらしい死を与えてやる。ホワイトホースへと見せしめにもな」

部下にむかって「連れて行け」とバルボスが命じると、部下たちが動いて俺たちを羽交い絞めにし、後ろ手を縛った。
抵抗すればできたが、さらに状況が悪化するに違いない。

なされるがまま、俺たちはこの要塞に連行されていく。


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