それを好機だと思ってしまった俺の心は
とっくのとうに汚れてしまっているのだろう


「なんで、なんで、なんで」

それ以上の言葉も出ずに、ただ泣きじゃくる幼馴染を見て俺は喉まで出掛かった言葉を飲み込んだ。

「死んでしまったの」

ハルルの街で花を一輪手にとって言った彼女は言った。
エル帝都に婚約者が居た。
小さいころからの友人で、でもそれ以上の一歩踏み出せなかった。
自分の憧れだった人。
自分に持っていないもの、自分に与えて貰えないモノを惜しみなく与えてくれた人。
そんな彼女に自分はいつからは魅かれていて、そしていつだろうか
自分と彼女には「大切な友人」という超えられない壁ができてしまった。
彼女はいつか大人になって、自分も大人になった。
大人になってやっと、自分が抑えてきた感情を意識して彼女に想いを告げたあの日。
結果は惨敗だった、友人としてしか見れないといわれたあの日は今まで生きてきた中で一番、死を近くに感じた。

そんな彼女もやはり自分と同じで想いを寄せる人がいた。
ただ違ったのはそれが相手に通じたか、否か。

ユーリを見上げ、目に涙をためて、必死に事実を伝えるエルは昔とは違っていた
ユーリたちが追っているアレクセイが帝国全体を揺るがし、人が住めないようになっている
そしてエルの婚約者であった男は地震で落下してきた瓦礫によって命を賭した
それは最愛の婚約者の目の前で

「私が、あのとき……」

泣きじゃくりながらも必死に声を吐き出す、友人を見てユーリの心は彼女とは正反対に落ち着いていた。

「あのとき、逃げていれば……あんなところにいなければ」

涙がユーリの服をぬらした。
嗚咽を繰り返してそれ以上言葉にならないエルを抱きとめ、力いっぱい抱きしめたユーリ。
思った、これはチャンスなんだと
実際、存在するか分からないけど神様がくれた最後のチャンスなんだって
しかし、それを認めてしまったら自分が最低な人間だとユーリは意識せざる得なくて、必死にエルのことを考えていた。

「ユーリ……?どうしたの……」
「前にいったよな、俺だったら」

一生、傍にいて幸せにしてやれるって
月並みのプロポーズだけど、今の自分ならできる気がしたんだ

「だめ、だよ」
「……」
「死んでしまうよ」
「俺は、死なない」

そういった俺は笑っていたと、思う。
われに返って拒む、エルの唇に必死に自分の唇を押し付けて、同じ言葉を繰り返していた。

「愛してる」
「違う」

あの人とは違う、そう反復する彼女の意識を必死に自分に持っていこうとしたんだ。
あのとき叶わなかった自分の願いを、神に託す思いで
もともと、おかしな世界だったんだ

エルの隣にいるのはもともと俺であるべきだったんだ


愛してるなんて軽々しく言わないで
   (違う、あなたではない)



補足
あぁぁあ。なんかユーリが最低なやつに……
アレクセイとの決戦前、ハルルに立ち寄ったときくらいのお話かな?
ユーリが好きだった友人で告白したけど、好きな人がいるで断られ
そして婚約までしたけど、アレクセイがいろいろやったおかげでお亡くなりになり、
一人、悲しみにくれながらハルルに避難した夢主の前にユーリが現れて、みたいなお話。
故意に奪っちゃえみたいなお話ではなく、なんていったらいいんでしょー、ね?
あえて書きませんが、きっとこの先は続かないんだと思います、いろんな意味で。

ここまでの閲覧、ありがとうございました。
お題はAコースさまより


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -