ふわふわ女 | ナノ







「(あれ、)」


次にふわふわ女を見たのは、髪をオールバックにした男と無邪気に笑っているところだった。

退屈な授業を寝て過ごし、チャイムと共にぼんやりとした頭を叩き起こす。もう昼飯の時間だ。臨也と新羅に声を掛けられて席を立つとふとふわふわ女の姿が目に入った。何やら本を片手に話し込んでいる。話し相手は門田だった。そういえば門田は図書委員か。昼になると俺たちは4人で屋上に行きゆったりとした時間を過ごす。何となく話しかけずらくて門田の背中を見ているとふわふわ女が俺のことに気付いたようで門田に合図をした。その間に目が合ったがまた逸らされる。門田がすまん、と小走りでこちらに来る頃にはふわふわ女の姿は無かった。


「気になるのか?」
「…あいつ、お前の何だよ。」
「ふ、はは!ただのクラスメートだよ。同じ図書委員でな。よく話すんだ。」


どうやらふわふわ女は門田と同じクラスらしい。ますます気になってくる。話してみたいが怖がられたということを告げるとまた笑われた。今日は1日臨也や新羅にからかわれるはずのネタを門田にも笑われたとなると憂鬱になる。屋上までの道のりが重くなった。


「もー!ドタチン!遅いー!」
「静雄と話していたのかい?」
「いや、まあ…な。」
「あっもしかしてドタチン、シズちゃんの片思い相手の話し聞いたの?!」


可哀想だよねー!と笑う臨也を蹴り飛ばすと門田がまぁまぁ、と止めに入る。いつもの光景だ。新羅が上手そうに食っている卵焼きを横から取って1つ口に入れる。しょっぱい。セルティ絶対砂糖と塩間違えたな。あー!という新羅の叫び声を聞きながら購買で買ってきたパンを口に運ぶ。ここにふわふわ女が居たらな。このパンがふわふわ女が作ったものだったらな。そんなことばかり頭に浮かぶ。フェンスに背中を預けて中庭に視線を落とすとふわふわ女とその友達らしき奴が楽しそうに弁当を広げていた。ぼうっとその姿を見ているとシズちゃん、と臨也の声が掛かる。視線を戻すと手元にあったパンが無くなっていた。残り一口ほどだったパンは臨也の口の中に入っていく。ぶちん、と何かが切れる音がした。


「いーざーやーくぅーん!」


フェンスを掴んでひん曲げると下から悲鳴が聞こえた。下を見るとふわふわ女たちがばたばたと弁当を片付けて逃げようとしている。他の女たちが走っていく中、ふわふわ女は俺の姿を見たまま動かなかった。何してんだ、あいつ。危ねぇから逃げとけよ!と下に呼びかけると1人の女がふわふわ女の手を取った。ふわふわ女はそれに釣られてその場を去った。行き場の無い気持ちが渦巻く。


「ほぉら、シズちゃんに恋愛なんか無理なんだよ。」


臨也の言葉が耳をすり抜けていく。いつになったら、話せるんだろうな。


(20110329)
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