「大輔、お前は成長しねーなぁ」
「ちょ、太一さんなんですか急に!」

 毎日デジモンを追っかけまわしたり追っかけまわされたり揚句何故か一か所怪我して帰ってくる大輔は、ちっとも成長なんてしてない、それはこうして次元を超えてから増えただけであって以前はそこまで子供じゃなかった、わけでもないが。
 同じ年である啓人が勿論大人し過ぎるっていうのもあるんだろうが、拓也でさえ啓人に合わせているって言うのに。
 でもそれがまたらしいと思う、オレはおもむろに大輔の頭を撫でやった。
 驚いたような声を上げた後はされるがまま撫でられてちょっとばかし静かになる大輔、へらって笑ってやればなんで笑うんだと言いたげな表情を浮かべていて、ああ、子供だなーっと再実感。
 オレは何も言わずにその場をタイキと大と離れた。
 ちょっとした準備があるんでね。

「急にどうしたんだあの人は…」
「喜んでるように見えたけどなぁ」
「俺もそう思ったなー」
「喜んでる?ただからかってるだけだろ〜」
「大輔くんってそういうところ損してるよね」
「うんうん」
「は?」

 遠くから聞こえてくる声に軽く耳を傾ける、姿ががらりと変わったオレに驚いたのは大輔を抜いた数人で、まあ略して言えばこの中で大人組に括られる、だからこそああいった子供の掛け合いは聞いてて微笑ましくも思う。
 しっかし、お守り役にタギルを回したが、あいつまさかハントしにいったとかじゃねーだろうなぁ。
 今日の主役をまたせまいと急いで準備に取り掛かるも、あいつらが気になってしかたねえや。
 かしゃかしゃとクリームを混ぜる腕に力が入り大に注意されて気付く、いけねえいけねえこれじゃあ固まっちまう、前日に作っておいたスポンジを用意して一通りの盛り付けをしておく、メインなんてもんに凝ったって主役じゃねえんだこういうのは気持ちが大事なんだよ気持ちが。
 慣れないことをしたからか大は疲れ切ったように息を吐いたが、おいおい破壊的だぜ、オレはただサラダを作るよう頼んだんだってのに、ここまでくりゃあ笑い話さ。
 むしゃくしゃにちぎられたレタスとごろごろに切られたきゅうりとぼろぼろに千切りされつながったキャベツに、トマトのスライスだってスライスとは到底呼べない形だな、ポテトサラダだってただのじゃが芋じゃないか。
 大きく笑ってしまったオレとタイキの声につられて子供たちとお守りがあわただしく入ってきてしまった。

「どうしたんですか太一さーん!」
「あっちゃーまだ呼んでないってのに」
「わぁ、すごい!豪勢ですねー!言ってくれればぼくもパン作ったのになー」

 その手があったか。

「でもどうしてこんなに…?」
「えーっと、ごめんなさいタイキさん!」
「いや、いいよ、ただ太一が…」
「大丈夫だ、どうせばれるんだ、早かろうが遅かろうが同じだろう」
「秘密なんて酷いじゃないですかー!」

 全く何も知らないのは五年生であるこの子らだけで、その行動がいちいち笑えてくる、くくっと笑ってしまえば何故だ何故だと眉間にしわを寄せる三人、あーあー可愛い奴らだ。
 いいから座れ!
 大の笑顔と大きな声で全員が席に着く、ちょっとまった大輔は真ん中だ、そういってタギルに誘導させればきょとんとわけのかわらなそうな顔がまた面白い。
 破壊的なサラダをテーブルに運んで俺も大輔の右側に座る、そろそろ感づいてきただろう、自然ににやにやと緩む口元をただすのが大変だ。
 さ、大輔、
 声をかけながら呆けた顔したこいつの目の前にゆっくりとロウソクの刺さったケーキを出すと啓人と拓也が笑顔で見つめてきて、大輔は見る見るうちに表情が輝いてきて、オレは、なんて幸せ者なんだろうな、後輩のこんな顔を見られるなんて。

「こ、これ、」
「わー!おめでとう大輔くん!」
「お前自分でも忘れてたのかよー!」
「た、太一さんっ、」
「…大輔、」





ハッピーバースディ。
(お前と出会えた奇跡に、)
(めいっぱい感謝するぜ)

(泣く奴があるかぁ)
(だ、だって…)
(いいから食えよ、な?)
(…はい!)





120515
大遅刻すいません。まあ太一さんと大輔メインで。
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