「腹減ったー!」

「まだ授業中だよ大輔くん」

「いやもう拷問だろ…なんで今日に限って給食時間おせえんだよ…」

「普段と変わらないからね」


 四時限目が終わるまであと十分弱、それすらも耐えられないほどお腹がすいているのか大輔くんは机に項垂れながらも手はしっかりと教科書を持ってそれを立てながら先生の目を回避していた。
 ぼくの隣にいる大輔くんを挟むように向こう側にいる拓也くんも気だるそうに欠伸をしていて、呆れたようにため息が出た。
 しかしあと十分弱で終わる授業、相手をするのも面倒だと思ってそれを無視するように素早く手を動かしてかりかりとペンを走らせた。


「なぁ啓人ぉ」

「…」

「なぁ、なぁって、おい啓人ー」

「…」

「なんかもってねえ?パンとかさ、おれ今日給食だけじゃぜってー足んない自信ある」

「うるさい」

「ひでー」


 つんつんと己のペンでぼくの横腹をつつく大輔くんを睨みながら発した言葉にひでーと言いつつも笑っている大輔くんを変な目で見てしまう、うるさい、と言われて喜んでいるとしたら相当変な性癖だ。
 もう少しだよ、と言えば無理ー啓人ーと子供のように駄々をこね始める、これは先生に訴えても怒られない程度には鬱陶しく、奥にいる拓也くんにどうにかしてと目線を送るも手をひらひらさせて笑っていた、いや違うそうじゃない!

 しかし伝わらないそれに仕方ないと息をついてそっと大輔くんに囁いた。


「今日ぼくんちおいでよ、ごちそうしてあげるから」

「ホントかー?」

「本当だよ、だからもう少し頑張りなって」

「おう!」


 突然元気になる大輔くんを見て笑えば大輔くんはすぐに先生にあてられ聞いていなかった問題に頭を悩ませていた。





パンでもお食べ?
(啓人んちのパン大好きなんだよなー!)
(ありがとう、喜んでもらえて何よりだよ)
(あ、でも)
(ん?)
(啓人が作ったパンだから余計に好きだぜ)
(なっ…あ、ありがと…)

彼は恥ずかしげもなく笑った。





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