ぼくにはあこがれの先輩がいる、正直その人をおっかけてこの中高一貫のところを受けたといっても過言ではない。
 世間からカリスマだと騒がれた尊敬の人の名前は八神太一、サッカーがすごく上手で小学生のころからテレビや雑誌に映っていたのを今でも覚えているぐらいその人を尊敬している、別にサッカーだけじゃない、その人の人の良さやきさくなところは尚も惹かれるものだ。
 ぼくは特別運動ができるわけじゃないし勉強だって平凡だ、だけどその人のためにがんばれた理由はその人のようになりたいという願望があるのかそれともその人のそばでいつか補佐ができればいいなんて思っているのかはわからないけれど。


「それにしても広いなぁ…ジェンはどこだろう」


 クラスが離れてしまった親友を探して学校周りをうろつくと流石入学初日、部活勧誘は勿論お祭り騒ぎのように屋台までで初めてこの学校に入ってよかったと心から思った。
 言ってみれば太一さんを追いかけて入ったにしても面識なんてない、ただテレビで見た人、雑誌で見た人という一般的に芸能人のような扱いなのだ、唯一の救いといえば近場に住んでいたということ。
 そんなたったひとつのたからものの雑誌と校内地図を手にしてあたりを見渡してみる、走り回って迷惑なものも目にうつっては嫌だなぁと思い避けようと身体を動かすと注意の至らなかった自分は誰かにぶつかった。
 まさか反対方向に人がいたとは、慌てて謝るとへーきへーきとけらけら笑う声。
 この声には聞き覚えがあり、思い切り頭を上げてみるとそこにはあのあこがれの太一さん、そしてその親友のヤマトさんがいたのだ。


「たたたた、太一さん!」

「ん?どっかであったっけ?」

「あ、いえ、その、あの、ファンです!」

「おいおいその前に言うことあるだろ」

「え、あ、ああすみません!」

「いやそうじゃなくて」


 必死なぼくに対して楽しそうな太一さんとくすくす笑うヤマトさん、えーっとえーっと、普段使わない脳をフル回転させて何から話せば良いやらと言葉を探すものの人間はテンパっているときにこそ何もできないもので今それがまさに顕になっていて傍から見れば面白い光景だろう。
 取り敢えずもらったばかりの生徒手帳を差し出すとサイン〜?なんてよくわからなそうな顔をしてしたことないしなぁ、と呟きながらただそのまっさらなページに名前を書いてくれた、それもぼくの名前も一緒に。
 え、え、なんで。
 というぼくに、いや生徒手帳だし、とつっこんでくれてそんなことすら忘れていた自分が恥ずかしいと思う反面、生徒手帳でよかったと内心喜んだ。


「なんかよくわからないけど、よろしくな、啓人」

「はい!あ、えーっと、そうだ!」

「ん?」





初めましてこんにちわ!
(って言いたかったんです!)
(…ぶは!)
(え?)
(気に入った!お前おれんとこの部活に入れよ!)
(ええ?!)
(なぁヤマト?)
(好きにしろ)


補佐としてお手伝いします!全力で!





130718
- ナノ -