「ねぇ隊長、隊長っていつもやきもちやいてますよね」

「っ…はぁ!?アリサ目ぇ悪すぎ」


アリサの言葉にジルは含んでいた飲み物を吐き出しそうになり、それを必死に堪えたあと睨みつけていた。
丁度任務から戻っていた俺はその様子を上から見ている、俺の気配に気づくことのない最愛の彼女、向かい側で先に俺に気付いたアリサにしーっと口元に指を当ててその会話を続けるように流した。
察したアリサも小さく笑ったあとまたジルに問いを投げかける。


「結局のところどうなんです?タツミさんの事嫌い?」

「…嫌いだったら、やきもちとか、ないでしょ」

「でもあんまりそういう二人には見えないですよ、タツミさんに嫌われてもいいんですか?」

「あのね、ご心配なくとも大丈夫です」

「言い切れるんですか?ふぅん…」


ちらりと俺とヒバリちゃんを見たであろうアリサは少し憎しみこもった瞳をしていた、相当ジルに対しての忠誠心があるのだろうその瞳に若干引きながらひらひらと手を振るとあからさまに背けられた顔、そこまで嫌わなくても、と思いながら自分の行動を改めて見返してみる。
確かに、ひどいっちゃひどいよな。
苦笑して少し気落ちをしている俺にいつの間にか傍にいたソーマが気を使ってか小さい声で自業自得だと呟いた。

小さくため息をついて改めて思い浮かぶ自分の行動、女性側からしたら本当にひどい行為だということはわかってはいるのだが、どうしてだろうかそれをやめることができない。
ヒバリちゃんい言い寄れば、ジルが素直になるからだと知っているからなんだろうな、ナナミとヒバリちゃんの関係は勿論知っているし祝福だってしているが、そこできっとヒバリちゃんに言い寄ることをやめてしまうとジルも変わってしまう気がして、変わることが、きっと怖い。


「あんな人やめたらどうです?ジルさんにならもっといい人いますよ、例えばブレンダンさんとか、シュンさんもいいと思いますけど」

「…アリサ、」

「はい」

「シュンもブレンダンさんも、勿論好きだけど、ボクは昔あの人に助けられたことがあるんだ、きっとボクはその日から、ずっと、好きなんだよね」

「え…?」

「ボクがゴッドイーターになると決めたきっかけにはタツミさんも含まれてるってこと、わかった?」

「へぇ…」


懐かしむように話し始めたそれは俺の初任務の日だ。
ついていくように向かった調査に、何故かこいつは一人そこにいたんだ、ただのガラクタを見て綺麗だねっていいながら拾って集めていて。
この頃だったか、上の者が慌ただしく探していた子供のことの話でその場がもちきりだったこと、俺はすぐにそれを思い出してシルグに連絡して、そしてそいつに話しかけた。
7年前だから…まだ11歳だったかな、懐かしい、あれほどひどくない今の平和な日常に笑みを浮かべてその話しを聞いていると、どんどんジルへの愛情が湧き上がる。
こんなに想ってもらている、俺はすげぇ幸せもんだよ。

ソーマ同様いつのまにいたのかシルグが、いいわねぇタツミ、と俺に寄りかかりながら不満そうに言う、俺の嫁さん可愛いだろ、と言うと認めてあげない、と満面の笑みで返された。
榊さんよりもきっと、コイツの方が厄介だ。


「それじゃあ大好きなんですね、タツミさんのこと」

「勿論」

「言ってあげればいいのに…」

「言う必要なんてないよ、だってわかってるもん」

「え?」

「タツミさんのこと、信じてるって言ったんだよ」


ですって。
と言って俺を見るアリサにつられてこちらを見たジルは刹那真っ赤な顔で慌てては逃げるようにエレベーターに乗り込んでいく。
あーあ逃げられた、とけらけら笑って言うシルグに俺も笑って返してやると、ソーマやアリサが追いかけろとかお返ししろとかしつこく言ってくるものだから、きっとにやにやしているだろう自分の顔を抑えることもなく捕まえてくるわ、と言えば今度は罵声の嵐。
いいんだ、彼女の本音をその子の口から聞けて、俺は今幸せだからな。





君の気持ち。
(ジル)
(た、タツミさんいつからいたんだよ!)
(最初からいたぞ)
(声かけろって!)
(…ジル)
(な、に…?)
(好きだ)
(…、っばか!知ってるっつの!)




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