「うああぁぁあん」 「…はぁ」
盛大に転んだ君がいけないのに、人の注意を聞かないで走り回って、しかも人にいたずらまでして、其のくせに転んで大泣きするなんて、人が見たら明らかに私が悪いということになるだろう。
「ヒロトー!風介が小鳥泣かせてんぞー!」 「貴様!ホラを吹くな!」
ほらみろ、通りすがりに過ぎない晴矢に言われた、それなのに泣き止まない君は一体、何を求めているんだ? 座ることも顔を隠すこともせず大きく大きく泣くこの子に精一杯の宥め、目の前にしゃがめば同じ目線に君の顔、なでりと頭を撫でてやれば汗でべっとりとした髪の毛、あーあ今日も私がいれてあげなければならないのか。風呂に。
「一体どうしたと言うんだ、私は何かしたか?」 「うああぁああんっ」
子供の相手は疲れる。 小鳥にはいやになつかれていた、何をしてもそばに擦り寄って、時には邪魔してきて。
…そうか。 子供ははっきりと自分の意思を伝えるものと、小さなことでかまってオーラを出す子がいるが、なんとまぁこいつも後者だとはな。 確かにあれだけのことをして構ってやらない私が悪い、のかね。
「小鳥、」 「うっ…うぇ…ひ…っく、」 「おいで、一緒にアイスを食べようか」 「…っ!うん!ふうすけにいちゃん!」
ひょいと抱き上げて笑いかけてやれば単純な子供はにっこりと笑顔になる。 こんなこと、小鳥にしかしたことなかったな…ああ、こいつもいつか誰かの嫁に出るのか。 ふ、そんなこと、させないがな。
構って! (これから先も、) (私を優先して!)
(小鳥、お風呂入るよ) (あわあわ!あわあわのせっけん!) (はいはい)
120712
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