花びら。
「拓人さん見てください!」
「すごい…これ全部小鳥がやったのか?」
「はい!」
目の前に広がる自分の家の庭には小鳥が毎日欠かさず手入れをしていた花壇、そこには広がる花々、色鮮やかで風に揺れるそれはまるで合唱しているかのようにも見える。 つい見惚れてしまうのはそれが美しすぎるからなのか、それともこの子が一生懸命毎日手入れをしていたのを知っているかなのか、否、それはどっちもだと俺は思う。 今までに見たことのない無邪気な笑顔につい自分の頬もほころんで一緒になって喜んだ。 きゃっきゃとはしゃぐ様は本当に子供のよう、ふわりと舞う髪からは同じシャンプーの匂いまでもが漂う。
「散ってしまうのがさみしいですね…」
「大丈夫、それでもまた小鳥が咲かせてくれるだろう?」
「はい、頑張ります!」
笑顔で花に水をあげる準備に移りながらしみじみと口にした小鳥に笑顔で元気づけてあげればまた見たことのない満面の笑みで笑うから、自分の心臓のときめきを隠せずその傍にいき一緒にそのホースを手に持った。 シャワー状になった先が綺麗に弧を描いて虹が見えるほどだ。
その時ふと強い風が吹いてざざざとその花壇を激しく揺らした。 少ないとは言え花びらは大きくまいひらひらと自分たちの上から降りかかる。 よくテレビで見る紙吹雪にのようで綺麗だが、少し落ち込んだ小鳥が見ていられず、花びらが舞うなかその子を引き寄せて力強く抱きしめた。
「拓人さん…?」
「君へのプレゼントなのかもしれないな、」
「え?」
「この花吹雪、きっと君に元気だよと伝えたかったんだ」
自分でも子供っぽい元気づけ方だと思ったが、そんな些細な言葉でも嬉しそうに小鳥が笑うから、自分はこの花びらに感謝した。 何よりも綺麗で散らない花がそこにいるのだから。
花びら。 (元気になーれ) (まるで花のお母さんだな) (それじゃあ拓人さんは花のお父さんですね) (ああ、悪くない) (ふふ)
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