僕には君が必要だった





俺にとって、"バスケ"とは唯一無二の大切なものだった。
小せぇ頃から毎日バスケをして過ごしてきた。俺自身であるといっても過言ではなかった。

そんな俺にももう1つ、大切なものが出来た。




「もー、またケガしたの?」




白川ちほは、帝光男バスのマネージャーだった。

1年の頃から居残り練習をしたりして、オーバーワークをしすぎた俺に、ケガはつきものだった。幸運なことに大きなケガはなかったが、捻挫や突き指はしょっちゅうだった。
俺はケガをすると必ず、当たり前のように白川の元へ行く。


「いやーリバウンドで競ってたらこう、グキッ!とな!」
「指立てたままボールに垂直に取りに行くからでしょー、もー」


文句を言いながらも、俺の指を見てテーピングを始めた。その手つき離れたもんですぐにクルクルと指に白いものが巻かれていった。

白川の家は家族で整骨院を経営していて、体のケアについては専門家並みの知識を持っていた。負けられない試合が合った時、俺がけがをして辛い思いをしていたらテーピングをして出させてくれた。マッサージも上手くて、いつの間にか俺はいつもの隣にいるようになっていた。
裏では俺の専属マネだとか呼ばれるほどだ。実際は違ぇし、白川もそんなつもりなねーだろうけど、俺は優越感に浸ってる。


「利き手じゃなくてよかったね。シュートタッチもそんな問題なさそうだし」


でも本当は、隣にいるのはマネだからとかじゃなくて。
白川の笑顔は温かくて優しくて、本当に癒されるって思う。隣にいて心地いーんだよな。
いつからか俺は、努力をして必死に俺らのサポートをしてくれるに特別な感情を持つようになっていた。




「いつも、ありがとうな」




ガラにもなく自然と言葉が口から出ていた。白川は驚いた顔をして、だけど嬉しそうに笑った。すっげぇ可愛い笑顔だった。

白川は俺のバスケが大好きだってよく言ってた。キラキラ輝いて素敵な世界が広がるんだと。それは俺が試合中に見るような世界と同じような気がする。
俺のバスケの見る世界は白川にも見えたんだ。それを思うと嬉しくて堪らなかった。
一緒に頂点を目指そうと言って同じ高校にも通うという約束をして。

俺らは、何も言わなくても繋がってるって。
そう、思ってたんだ。




「ねぇ、大輝。私、いらなくなっちゃったね」




一緒に笑うのも、楽しい時間を共有するのも、これからもずっとそれは変わることはねぇって。
隣に居るのが当たり前すぎて、泣きそうな顔で俺に告げた白川の言葉を疑った。
でも、何も言い返せなかった。

お前までそんなこと言うのかよ。
俺が最強で、勝てるからそう言うのかよ。

腹が立った。俺の見ている世界は、白川には見えていなかったんだ。
1人で進学した桐皇学園。2人の約束はいつの間にかなかったことになっていた。ケンカしたから当たり前なんだろーけど。

――…でも、頭の中にはいつもお前がいる。


"だーいきっ自主練終わりそう?"
"んーまだやってくわ。先帰っか?"
"ううん、見てる!"


ただ俺は、お前のことが大好きだったんだって。
後悔してももう遅い。だって今、アイツは。




「大我食べすぎーお腹壊す!」
「日本のバーガーは小せぇんだよ」
「知らないからねー」
「とかいって倒れたら付きっきりだろ?」
「…うるさいなぁ、もー」




なぁ、ソイツ俺より弱ぇじゃん。
さつきに聞けば、俺と似ていてムカついた。重ねて見てんじゃねぇかなんて淡い期待もそうではなかったことがわかり、すぐになくなった。

いつも俺の味方だったじゃねぇか。
何で俺じゃねぇそっち側にいんだよ。こっちこいよ。


――…俺とそいつ、何が違うってんだ。


俺だってお前のこと大切にしてやれるのに。バスケがない俺は、お前にとって何にも価値のない人間なのかよ。

隣にいてほしいだけなんだよ。
ただ素直に言えなかっただけなんだ、好きだって。









僕には君が必要だった







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