宮地(黒バス)
ぐったりと机に突っ伏した私には目もくれない彼は、先ほど私が解いたばかりの問題が書かれたルーズリーフに丸をつけている。赤ペンが丸やチェックをつける音を聞きながら目を瞑ってもう寝ちゃおうかな、と思った瞬間、彼がペンを置く音がした。
「こんだけできりゃ上等だろ」
おら起きろバカ、と頭を軽く叩かれて、机から身を起こす。目を擦って宮地くんの方を見れば、不機嫌そうな顔をしていたが、まぁいつものことだ。
「合格ならこのまま寝てもいいんじゃないかな?」
「なにバカなこと抜かしてんだ、刺すぞ。間違ったとこ見直すんだよ」
えぇーと文句を言うとシャーペンで頬をぐりぐりされた。
「お前がオレに勉強を教えろって頼んだんだろうが」
「そうなんだけどさー宮地くん頭良いからイケると思ってたらめっちゃ厳しいんだもーん。私褒めて伸びる子だからもうちょっと優し……イタッイタイイタイ!宮地くん!芯出す方はダメ!そっちはイタイって!」
「ぁあ?聞こえねぇなぁ。あんまふざけたこと抜かしてると今晩寝かしてやんねーぞ」
状況が状況じゃなければハイ、喜んでー!だったのに。いや喜びはしないかな、やっぱ。
頬に丸くついた跡を指で擦りながら宮地くんの問題解説を聞く。本当、彼の説明は分かりやすいし間違えた後のアフターケアまで万全だし、人選はミスってなかったと思う。ただ尋常じゃなく厳しいだけだ。私はこの数時間でどれだけ叩かれ、つねられ、轢かれそうになり、刺されそうになったのだろう。
「……こんな感じだ。基本は間違ってねぇから後は試験直前にもう一度やり直しておけば大丈夫だろ」
「はい。ありがとうございました、宮地先生」
深く礼をして、さて帰ろうと荷物をまとめる。忘れ物を確認していると、彼が私に教科書を差し出し、忘れんなよバカとのお言葉までいただいた。
「じゃ、今日はかえ……」
立ち上がりかけた手を掴まれ、頬に触れた唇のせいで続きの言葉は音を無くした。
「お疲れ」
私の視界に入った彼はとても良い笑顔で私の頭をぐしゃりとかき回した。
大変よくできました。
-END-