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::所詮は。



いつもの定時連絡。
変わらない何もない部屋。
いつもと違うのは、兎吊木さんと俺の距離。
いつもは嫌と言うほど近い兎吊木さんの顔が大体二歩分くらい空いている。
始めてあったときは、一部屋丸々使って距離を空けていたのに。時間の経過とはなかなか怖いものだと思った。
「…兎吊木さん。」
「どうしたんだい?」
「俺が、兎吊木さんを嫌う理由って、なんだと思います?」
俺の唐突な質問に、兎吊木さんはぴくりと器用に片眉を吊り上げた。
「…ふふ。面白いことを聞くんだね。志人君。」
「面白いこと…ですか。」
「あぁ。とても面白い。何故なら、そんな事、とうの昔に君も、そして勿論俺も知っているんだから。」
椅子にふんぞり返って、足を組み直した兎吊木さんは何でもなさそうにそう言った。俺はそれにそうですか、と返して続けた。



「だって、俺は機械ですから。俺は意思をもった機械ですから。だから、これは、機械としての゙壊されたくない゙という本能みたいなのが、《害悪細菌》と謳われた貴方に、働いているんでしょうね。」
何とはなしにそう言えば、兎吊木さんが椅子から立ち上がって俺との距離を詰める。それから俺を、壊さないように(この男が、だ。)そっと抱き締めた。
「でも、君の前にいる俺は、《害悪細菌》としてではなく、グリーン、グリーン、グリーン、ではなく、ただひたすらにレッドを出し続けているのだから、だから君は今こうして俺との接触を拒んではいないぜ?」
「そうですね。そうなんです。だから、今俺は、貴方の事、」






嫌いじゃない。


所詮は小さな篭の中の話。



2012/09/09 16:10 Back

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