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『違うのっ!私は、私は、ただ……。貴方に愛してる、って言ってほしくて……!!』
テレビには今を代表する女優が離れていく男を追うシーンが写っていた。
「……面白くない。」
ブツリ、と音を立ててテレビの電源が落ちる。
その時スゥ、と扉が開いた。
後ろを振り向けば湯気をたてるマグカップを二つ手に持った火神君がいた。
「テレビ、つまんなかったのか?」
コトン、とテーブルにマグカップが置かれる。
「この時間帯はつまらない恋愛物が多いですね。」
「まーなー。」
ぃよっ、と僕の隣に腰かける火神君にもたれ掛かる。
「……今日は随分甘えただな。」
「…………暇、ですから。」
ふい、と照れ隠しでそっぽを向く。
きっと微笑っているであろう火神君はゆっくりと僕の髪を梳く。
「好き、だよ。黒子。」
唐突に言われたその言葉にいつもは満足していたのに、今日はそれ以上が欲しかった。
「……黒子?」
ぶすくれた僕をギュッと抱き締めながら火神君が不安そうな声を出す。
「もっと、」
「へ?」
「もっと!」
呆けた顔の火神君を抱き締め返して次をねだる。
「好き、」
「違う……。」
「……?」
違う、違うの。
僕が言ってほしいのはそれじゃないーーーーーーー。
ふと、さっきのドラマの台詞が呼び起こされる。
『違うのっ!私は、私は、ただ……。貴方に愛してる、って言ってほしくて……!!』
「違うんです……。」
「黒子……?」
(私は、)
「僕は、」
(私は、ただ……。)
「僕は、ただ……。」
(貴方に、)
「火神君に、」
(愛してる、って言ってほしくて……!!)
「あ、……愛してる、って、言って、ほし、んっ!?」
言葉の途中で火神君がキスを落としてくる。
それは触れるだけの軽いキス。
「俺だって愛してる。でも、」
「え……?」
「俺は、愛してる、だけじゃ足りないくらいにお前を愛してる。」
「っ……!!」
火神君の言葉に顔に熱が集まる。
嗚呼、たまにはこんな甘い雰囲気も良いかもしれない。
end...
2013/03/27 10:24
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