今日は私の大好きな旦那様が帰宅する日。


私の旦那様は忍術学園で教鞭を執られています。いつも家を離れて住み込みでのお仕事となるあの人も今日から長期休暇に入るのです。


年に何度かしかない長期休暇だから帰ってくるときはいつも腕によりをかけた料理を作ってお出迎えする。



前に会ってからもう数ヵ月が経っているかしら…。


寂しくないと言ったらそれは真っ赤な嘘になるけれど、あの人はいつも文を送ってくださるから私はそれを楽しみに毎日を過ごしていた。



あの人からの文が溜まっている箱の中から一番新しいものを取りだし広げる。


几帳面な性格が出ている綺麗な字で書かれた文には、今日の日付と昼頃には着くと書かれていた。


お天道様も真上に登り始めたので、そろそろかなと思い文を戻して玄関の外に出る。


早く帰って来ないかな。

帰ってきたら話したいことがたくさんある。

早く会いたいな。



今か今かと待っていると、大きめの荷物を持った愛しい人の姿が遠くに見えた。

私はもう我慢できなくて、着物の裾を気にしながらも早足でそちらに向かう。


会いたかった、会いたかったんです。



「太逸さんっ」


私が近づいて名前を叫ぶと、彼は口元に笑みを浮かべて片手を上げた。


彼の前まで着くと太逸さんは少し笑って言う。


「ここまで来てくれたのか、玄関でも良かったんだが。」

「す、すみません…はしたないとは思ったのですが、我慢できなくて。」


本来なら玄関で三つ指をついてお出迎えするのが正しいのだとは思うのだけれど、もう我慢できかった。

早く会いたかったのだ。


「いや、私も早く会いたかった。ありがとう。」

「太逸さん…」


太逸さんは優しく笑って私の頭に大きな手を乗せた。


「ほら、せっかく帰ってきたのに言ってくれないのか?」
「………おかえりなさいっ」
「ああ、ただいま」


久しぶりに交わした挨拶に泣きそうになるも堪える。


「ほら、とりあえず家まで行こう。」
「はい。お荷物お持ちします。」

「いや、これはお前には少し重いから大丈夫だよ。」
「でも…」

「ほら行くぞ。」


そう言うなり早速歩き出した太逸さん。

私も慌てて後を追い、太逸さんの隣を半歩後下がって歩く。


「留守中何か変わったことはあったか?」
「いえ、大丈夫です。」
「そうか。」

「太逸さんは今学期何かお変わりありましたか?」
「そうだな…または組の連中がいろいろとやってくれたな。」
「あらあら…ふふっ」

「でも、元気があって素直ないい生徒達だよ。」
「そうですか…」


生徒を語る太逸さんは先生の顔をされていて、私はそれにいつも見とれてしまう。


そうこうしている間に家に着いた。

太逸さんが扉を開けて中に入り、私もそれに続いて中に入る。

私が扉を閉めて振り向くと目の前が真っ暗になった。



「太逸、さん…?」


私の視界を塞いだのは、太逸さんの硬い胸板。

そう、私は太逸さんに抱き締められていたのだ。


太逸さんはひとつ大きく息を吐くと少し体を離して私の瞳を見つめた。


「会いたかった」


そう言った太逸さんはとても切なそうな、愛しそうな表情をしていて、私の涙腺をいとも容易く壊してしまった。


太逸さんへの愛しさが溢れるように、私の目から涙がこぼれ落ちる。


「わ、私もっ、…あい、たかった…」


私がそう言うや否や太逸さんは私に覆い被さり、口付けをした。


最初は優しかったそれも、徐々に今まで会えなかった分を埋めるように激しいものとなる。


「んっ、ふ…んぅ…太逸、さ、んっ…」

私にはその深い口付けに答えられるほどの技量がなくて、ただただ受け入れるだけになる。


時折太逸さんが私の名前を囁くことで私の腰はもう殆ど力が入らない。

でも何とか付いていきたくて、ぎゅう、と太逸さんの胸元の着物を掴む。



暫くすると唇が離され、また強く抱き締められる。


「…はぁっ……は、…」

「…っすまん、我慢出来なかった…。」

そう言う太逸さんに言葉を返したくても、呼吸が儘ならなくて声が出せない。


だからどうにか分かってもらおうと太逸さんの胸に埋めた頭を左右に振った。


私の息が整った頃、やっと体を離して太逸さんを見つめる。


「大丈夫か?すまん、」
「いえ…、嬉しかったですから。」


私の言葉に太逸さんは優しく笑って頭を撫でてくれる。


「お前みたいな嫁を貰えて…私は幸せだな」
「そんな…もったいないお言葉です。」
「そんなことないさ。お前と夫婦になって、良かった。」


その言葉にまたも私は涙腺が壊れたように泣き出してしまう。

その涙の粒を太逸さんは笑いながら拭ってくれた。


「わ、私もっ、…太逸さんの、お嫁さんになれて…良かったですっ…」
「そうか…」

「私は、…太逸さん以外…考えられませんっ、」

「…ありがとう」



そうしてまた強く抱き締められた。

私達夫婦は他の夫婦の皆さんの様に毎日顔を合わせることも出来ないし、触れたいときに触れられない。

直接言葉で愛を伝えることだってめったに出来ないけれど。


でも、幸せです。

会えない分だけ、
愛しさが募るのです。



(愛してる)
(私もです)



おかえりなさい
(愛しい愛しい旦那様)



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拍手ありがとうございます(^^)

今回は厚着先生でした!
ダンディーな厚着先生にウハウハしている今日この頃(´ω`)


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日向繊










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