っと、永遠に。




「ちょと…待っ…んっ」
突然のことに驚いて、キラはアスランの肩を押しやろうとするが、噛み付くような獰猛な口づけに抵抗する気力は怯んだ。

(最初から抵抗できるなどとは思っていなかったけど。)

だって、どんなに態度で拒んでみても、結局自身の心が彼を求めているから。

「ん……ふっ…」
机もまばらでどこか朽ち果てた印象を与える旧校舎。
夕暮れに染まる教室が、キラとアスランの居場所だった。

父親が厳しく、優等生を維持しなければならなかったアスランと、天涯孤独の身で夜のバイトがバレないように、学校では真面目を貫くキラ。
どちらもよい意味で一目を置かれる存在の二人だったが、片方はお金持ちで、もう片方は貧乏という正反対の存在。
立場は違えど、互いを意識するのに時間はかからなかった。

アスランは肩の力を抜ける「場所」を求めて、キラは「ひと」というぬくもりを求めて、二人は身体を重ねた。
意識が遠のきそうなほどのキスをされて、唇が離れた瞬間、くらくらする思考に頭がうまく回らない。

「…っ! アス…っ…ここで?」
足がガクガクと、壁に背を預けていても不安定なほどに震える。
シャツの裾から手を差し入れて、お腹から胸の辺りを探るように撫でていたアスランに問えば、彼はキラの髪にちゅっと音を立てて口づけて、「ダメ?」と問い返す。
その間も彼の骨っぽくて、長い指先が胸の一番感じるところを掠めて、キラはびくりと身体を揺らした。

甘やかな仕草と意思を持っていたずらに蠢く手に今更"NO"と言えるはずもなく。

背伸びをして、触れるだけの"YES"を君に。


「……ぁ、ふ……」
セーターとシャツが、アスランの手によって全て脱がされる。
外気に晒された身体を、悪戯な指先が這い回る。慣らされた身体は素直に反応を示して、慌てて口元に手をやる。
いくら旧校舎とはいえ、誰もこないとは保証できないから大きな声は出せない。
摘んだり押しつぶしたりしながら、彼はもう片方に顔を近づけて舌を這わせる。
「……んっ……ン……」
バラバラの刺激を受けて、次第に壁をつたってずるずると身体が滑る。
愛撫を施すアスランの舌も同様に下腹部へ移動し、膝をついてキラの腰に腕を回して支え、へその横をゆるりとなぞった。

「ぁ…ぅ……やっ…、それ」
敏感になった身体で、全身の一番弱いところに程近いそこへの刺激は毒に近い。
腰だけを突き出すようにアスランの腕に固定され、彼はそこを執拗攻めた。じわりと生まれる、しびれにも似た感覚。
仕上げと言わんばかりに、最後にちゅっと音を立てて口づけた後、きつく吸い上げられてほんの少しだけ痛んだ。
ぼんやりとした視線でそこを見て、懸命に力の抜けた指を伸ばす。強く吸われたへその横を撫でて、キラはへへっと笑った。


「…キスマーク」


所有印が嬉しくていつまでも撫でていると、その指を、アスランは口に含んだ。
一本一本丁寧に舌を使って舐める。
目を軽く伏せてそうする様は、まるで違うものをしゃぶられているような感覚にさせる。記憶に残るそれが現状と重なって、熱い吐息を吐き出した。

「……ね、アスラン…」
呼ばれて視線を合わせれば、潤んだ紫玉の瞳とかち合う。続きを目だけで促せば、夕日にも負けないほどに顔を赤く染めて、キラはぽつりと呟いた。

「ほし、い……」
指先に吐息が触れて、彼が笑ったのがわかる。
悔しいけれど、もう、我慢なんて出来ない。



  ◇



「もう、夜だね」
シャツ一枚で机に座り足をぶらつかせるキラ。
アスランは濡れたタオルを手に、ため息をついた。

「こーら、そんな格好だと風邪引くだろ…」
「自分だって似たような格好のくせに」
「違うだろ…」
そう言うアスランの格好は確かに、キラが握ってくしゃくしゃにしたシャツと制服のズボンを身につけていたので、下着すら身につけていないキラの格好とは大違いだった。

「だってこれ以上着られないんだもん」
キラの指すものが容易に分かって、それが半分以上自分のせいだとも分かっていたので軽く息を吐くだけに留める。

「いいか?」
「ん……」
キラの傍に寄って、彼の膝裏に手をやり、少しだけ上げさせる。
月の光が輪郭を青白くなぞった。
腕を伸ばして、キラの内腿と中心部を濡れタオルでゆっくりと刺激しないように拭い去る。

「後ろは?」
「大丈夫」
淡々とした会話だけど、冷たさは感じなくて、慣れたなぁとキラは思った。
最初はアスランのこの調子についていけなくて、嫌われているのではないかと思ったほどだ。
でも、今は知っている、本当はこんな風にとても優しい人だと。



「ねえ、アスラン、僕たちっていつまでこうしていられるかな…」
それは、あたかも独白のような響き。
その答えは、いつも彼がくれるから知っていたけど、同時に、あまりにも現実味がなくて叶わないことも知っていた。

でも、たとえ叶わないものだと互いに知っていても、今だけでも、この瞬間だけでも、その答えを信じたい。


アスランの手が僕の顎を掴んで引き寄せる。
触れるだけのキスを唇に、頬に、眦に落として。

最後に、耳へ、微かな声で囁いた。



叶わない、約束を。


END

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