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「#エロ」のBL小説を読む
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拝啓、お父さん、お母さん。お元気でしょうか?そちらの世界は今、どうなっていますか?
私は…─

ザァッと音を立てて吹く風が外から入り込み、私の頬を優しく撫でる。

「名前さーん!」

「ん?きり丸くん!」

吉野先生に頼まれたプリントを運んでいる最中、後ろから声を掛けられ、振り向くときり丸くんがブンブンと手を振ってこちらに駆け寄って来た。

「丁度良かった!今からは組に行こうと思ってたんだ。一緒に行こう?」

「はい、喜んで!あっ、俺もプリント半分持ちますよ」

「いいの?」

「名前さんなら特別にタダでやりますよ」

ニッと笑うきり丸くんにつられて私も笑みを零し、「じゃあお言葉に甘えて」と言って私はきり丸くんに少しだけプリントを手渡した。

「きり丸、遅かったね。あれ?名前さん!」

「本当だぁ!名前さんも一緒だ〜!」

ガラッと戸を開けては組の教室に入ると乱太郎くんと喜三太くんが私を見て驚いた表情を浮かべる。二人の声を聞いた途端他の子達も一斉にこちらに顔を向けた。

「こんにちは。プリントを届けに来たんだ」

「きり丸くんに手伝ってもらっちゃった」と言いながらきり丸くんからプリントを受け取り、机の上に置いているとみんながぎょっとした顔で彼に視線を向けた。

「きり丸がタダで手伝うだなんて…!」

「明日は雨だな」

「いや、槍が降るかもしれない…!」

「お前らなぁ!」

「あはは!」

むすっと剥れるきり丸くんに噴き出して笑い、彼の頭をくしゃりと撫でると「名前さんも笑ってないで何か言ってやってくださいよ〜!」っと泣き付かれた。

「ごめんごめん。いつも助けてくれてありがとうね」

くすくすと笑いながらその場に腰を下ろし、きり丸くんの頭をよしよしと撫でると彼は照れ臭そうにふいっと視線をそらした。

「あっ、きり丸いいなぁ!名前さん、俺も頭撫でて!」

「ふふ、おいで、団蔵くん」

「そういえば、きり丸は夏休み中はまた土井先生のところに行くの?」

「おぅ!またアルバイト手伝ってもらうんだ!」

飛び付いてきた団蔵くんを抱きとめ、よしよしと頭を撫でていると庄ちゃんがきり丸くんに問い掛ける。ニシシッと笑うきり丸くんに乱太郎くんは「土井先生、お気の毒に…」と苦笑いを浮かべた。

「夏休みはみんなお家に帰るの?」

「はい、大半の生徒や先生方も実家に帰りますよ」

私の問い掛けに答えてくれた伊助くんに続き、虎若くんや三治郎くんも「俺も!」「僕も!」と言ってきた。

「そっか。あれ?でもきり丸くんは何で土井先生のところに行くの?」

「そ、それは…」

「?」

「俺、家が無いんすよ」

「えっ…?」

気まずそうに顔を伏せるみんなに首を傾げているときり丸くんは笑いながらそう答えた。

「家だけじゃなくて両親も…戦でみんな失いました」

「っ!?ご、ごめっ…!」

「いいんすよ、気にしてませんから!それに今は土井先生が面倒を見てくれてますし、みんながいますから!」

ニッと笑ったきり丸くんにみんなは「わあああん!きり丸ー!」と言って瞳を潤ませながら彼に飛び付く。わいわいと賑やかな声が響く中、私はただみんなのことを眺めることしか出来ずにいた。

「何だよ、暑苦しいな!」

「またまたぁ!本当は嬉しい癖に!」

「きりちゃんったら、照れ屋さん!」

「うるせぇ!あっ、そうだ!名前さんも一緒にどうですか?」

「えっ?」

突然話を振られ、戸惑っていると兵太夫くんが「それは流石に土井先生に相談してからの方がいいんじゃない?」とフォローを入れてくれた。

「私はいいよ。学園にいさせてもらえるように学園長先生に相談してみるから」

「えぇーっ!折角名前さんにもアルバイトの手伝いしてもらおうと思ってたのにぃ」

ぶぅっと膨れるきり丸くんに苦笑いを浮かべて「ごめんね」と謝っていると金吾くんが「そっちが狙いかよ!」と彼に突っ込みを入れた。

「あっ、そろそろ行かなきゃ。お邪魔しました」

「ええ〜、もう行っちゃうんですか?」

「うん、もう先生もいらっしゃるだろうし。また遊びに来るね?」

一人一人ポンポンと頭を撫でた私は「またね」と言って彼らに手を振り、廊下へと足を踏み出した。

「ん?名前?」

「土井先生…」

廊下を足早に進んでいると丁度前から歩いて来た土井先生と出会す。彼は私の表情を見た途端顔を曇らせ、ゆっくりとこちらに歩み寄って来た。

「名前、何かあったのか…?」

「いえ、何も?授業、頑張ってくださいね」

「あ、ああ…って、ちょっ!名前!」

私は土井先生から視線を外し、早口でそう告げると彼の制止の声も聞かず、その場から逃げ出した。


心乱すもの


きっとあの場にいたら私は、
涙が溢れ出して止まらなかった…。


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名前さんには甘いきり丸くん。