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- ナノ -
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「廉造くん…」

病室のベッドに寝ている廉造くんの手を握り、彼の名前を呼ぶ。

「廉造くん…!」

頬を伝う涙も拭わず、ひたすら名前を呼び続ければピクリと瞼が動き、ゆっくりと瞳が開いた。それに安堵してまた涙が溢れ出す。

「廉造くん…!」

朧気な瞳で私を見ていた廉造くんがすっと手を伸ばしてきて、私の頬に触れた。

「廉造くん…?」

「泣かんといて…名前…」

頬を流れる涙を拭った彼がポツリと呟き、徐に顔を近付けてきた。

「何しとんのやァァァ!!ゴルァ!!」

「い"っ…!!?」

近付いてくる廉造くんの顔に目を見開いて固まっていると竜士くんの叫び声と共にゴンッという鈍い音が室内に響き渡る。
い、痛そう…。

「った〜、てあれ?坊!?それにみんなまで…!」

完全に覚醒した廉造くんがきょろきょろと辺りを見回し、目を瞬かせた。

「えっ…?これ、夢とちゃうんか!?」

「何寝ぼけとんのや、アホ!」

「志摩さん任務中に怪我しはって、病院に運ばれたんよ」

「は、えっ…?」

未だに状況が理解出来ずにいると子猫丸くんが説明をする。それにポカンとして暫し固まっていたかと思えば廉造くんがこちらを向いた。
私は彼のことを直視出来なくて、視線をそらして顔を俯かせた。

「幸い、怪我が浅かったから二、三日すれば退院出来るそうですよ」

「良かったな、志摩」

「おん、ありがとお、奥村くん。みんなもありがとおな!」

病室にいるみんなに笑顔を向ける廉造くんに安堵したものの、私の所為で怪我をさせてしまったという事実がまた重くのしかかり、気持ちが晴れずにいた。

「それじゃあ僕らは帰りましょう」

「志摩!お前無茶すんじゃねーぞ?」

「はは、気を付けますわ」

「志摩くん、お大事にね」

「おおきに、杜山さん」

雪男くんや霧隠先生に続いてぞろぞろとみんなが病室を出て行く中、私は未だに廉造くんの手を握ったままそばを離れずにいた。

「名前?行くわよ」

「出雲ちゃん…う、ん…」

彼のそばにいたい…。私の気持ちを、伝えたい…。
そう思っていると出雲ちゃんに声を掛けられ、開き掛けていた口を閉ざした。
諦めた私は立ち上がって廉造くんの手を離す。しかし彼が私の手をぎゅっと握ったことにより再び二人の間が繋がれた。

「廉造くん…?」

「出雲ちゃん、堪忍…少し名前ちゃんと話させてや…」

驚いて廉造くんを見ると私の手を握ったまま少しだけ身体を起こし、出雲ちゃんに視線を向けてはっきりとそう告げた。
すると出雲ちゃんはため息を吐いて「名前に何かしたら許さないわよ」と一言だけ告げて部屋をあとにした。


しっかりと握られた手


指先や手のひらから伝わってくるぬくもりが
酷く私を安心させた…―


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この手を離したくない…
そう伝えたら、
あなたはどう思うかな…?




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