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- ナノ -
05


「あっ!志摩くんだ…!」

祓魔塾の授業が行われる校舎で雪男くんのお手伝いをして教室へと戻る途中、一人で中庭のベンチに座る志摩くんを見つけた。

「名前さんは本当に志摩くんが好きなんですね」

「へっ!?」

雪男くんにものすごい爆弾発言をされて顔が真っ赤になる。
ハッ…!こんな反応したら「はい、そうです」って言ってるようなものじゃない…!?

「ぅ、あ、えっと…!」

「頑張ってくださいね。応援してますから」

「へぇ!?」

「それじゃあ先に戻りますね」

「あっ、ちょっ…!」

弁解しようと口を開くが動揺しすぎて上手く言葉が紡ぎ出せずにいると雪男くんはくすくすと笑って行ってしまった。
うっ…まぁ雪男くんだったら他言することはないだろし…いっかな。恥ずかしいけど…。

バレてしまったものは仕方がないと諦め、私は空を見上げる志摩くんに近付いた。

「志〜摩くん!」

「わぁっ!?」

後ろから覗き込んで志摩くんを見ると彼は驚いて声を上げる。それにくすくすと笑いながら志摩くんの隣に座った。

「珍しいね、一人でいるの」

「そ、そうやろか?名字さんは何してはったん?」

「私?私は雪男くんのお手伝いをしてたの」

私の言葉を聞いた途端志摩くんは黙り込む。そんな彼に首を傾げた。

「仲、ええんやね…」

「えっ…?」

「奥村先生と…」

不安に思って声を掛けようと口を開けば彼にそう言われ、きょとんとして志摩くんを見た。

「そうかな?まぁ雪男くんのことは尊敬してるけど」

「同い年なのにすごいよね」という言うと志摩くんは力なく笑う。
うーん、確かに同じクラスだし、目指してる称号も同じだから話やすいところはあるけど…。それにしても、どうしたんだろう?元気ないなぁ…。

「志摩くんも勝呂くん達と仲良しだよね!」

「あぁ、あの二人はまぁなんちゅうか、家族みたいなもんやし…」

話題を変えるために勝呂くん達の話を出せば頭をくしゃりと掻きながら志摩くんは苦笑いを浮かべる。だけどどことなく彼の表情は柔らかくて、私は志摩くんを見てくすくすと笑みを零した。

「いいなぁ。私、幼なじみとかいたことないから。なんかそういうの羨ましい!」

きっと勝呂くん達は志摩くんのこと何でも分かっちゃうんだろうな…。
そんなことを思っていたら志摩くんの手が伸びてきて、風に靡く私の髪に触れた。

「志摩くん…?」

「俺は…」

指にくるくると私の髪を絡ませる志摩くんを見つめればゆっくりと顔を上げて私を見てきた。
彼の綺麗な瞳には自分しか映っていなくて、それにドクンと心臓が大きく脈打つ。

「俺は、名字さんともっと仲ようなりたい…」

「っ…」

指に絡めていた髪に口付けながら真剣な顔で私を見る志摩くんにカァァッと顔を赤くなる。
ゎああああ!!そ、そんな顔でそんなことするなんて…!!は、反則だよ…!!

頭の中がパニックになるのをどうにか落ち着かせて必死に言葉を探す。

「えっと…れ、"廉造くん"って呼んでもいい…?」

「えっ…?」

咄嗟にそんなことを言えば志摩くんは目を丸くする。
ぅわわ!嫌だったかな…!?

「私も、志摩くんと仲良くなりたいから…」

「ダメかな?」と窺うように志摩くんを見るとぽかんと私を見たあと、ブンブンと首を横に振った。

「ダメやないよ!むっちゃ嬉しいわぁ!」

嬉しそうに笑う志摩くんに安堵して私は笑みを零した。

「ふふ、良かった!」

「っ…俺も、"名前ちゃん"って呼んでもええやろか…?」

意を決したように私を見たかと思うと志摩く…れ、廉造くんは私にそう言ってきた。それに一瞬きょとんとしたあと嬉しさに自然と笑みが零れる。

「うん!えへへ、なんか照れるね」

「っ〜!」

完全に緩んでしまった頬をそのままにふにゃりと笑えば廉造くんがジタバタと暴れ出す。それを不思議に思いながらも彼に名前で呼ばれる幸せを一人噛み締めていた。


君との距離が一歩近付く


君に名前を呼ばれる度に
自分の名前が特別なものに感じるのは
どうしてなんだろう…?


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雪男くんの助手をする名前さん。




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