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「廉造くん…」

暗闇の中で誰かが俺を呼ぶ声が聞こえてくる…―
何やろ…左手が妙に温かい…。

「廉造くん…!」

あぁ、このかいらしい声は…名前ちゃんや…。
声だけやのうて、かいらしい顔も見たいねんけどなぁ…。

そう思っていると突如光が差し込んできて、ゆっくりと目を開ける。

「廉造くん…!」

目を開けた先には涙を流す名前ちゃんがいて、そっと彼女の頬に手を伸ばして触れた。
夢の中でまで泣かせとるやなんて…俺は最低な奴やな…。

「廉造くん…?」

「泣かんといて…名前…」

これ以上、彼女の泣き顔なんて見たくなくて…頬を流れる涙を拭って徐に顔を近付けた。

「何しとんのやァァァ!!ゴルァ!!」

「い"っ…!!?」

ゴンッという鈍い音と共に頭に痛みが走る。

「った〜、てあれ?坊!?それにみんなまで…!」

きょろきょろと辺りを見回せば祓魔塾メンバーがずらりと勢揃いしていた。

「えっ…?これ、夢とちゃうんか!?」

「何寝ぼけとんのや、アホ!」

「志摩さん任務中に怪我しはって、病院に運ばれたんよ」

「は、えっ…?」

未だに状況が理解出来ずにいると子猫さんが説明してくれた。
せや…名前ちゃんと居ったら鬼(ゴブリン)に襲われて…そんで名前ちゃん庇って怪我、したんや…。

じわじわと思い出してきた映像を頭の中で整理をする。
ふと左手が温かい何かに包まれてる感覚に不思議に思ってそちらに顔を向ければ名前ちゃんが俺の手を握ってベッドの脇に座っていた。
あぁ、それで温かかったんや…。

「幸い、怪我が浅かったから二、三日すれば退院出来るそうですよ」

「良かったな、志摩」

「おん、ありがとお、奥村くん。みんなもありがとおな!」

病室にいるみんなに笑顔を向ければ安心したように微笑んでくれた。だけど、未だに名前ちゃんは暗い表情のままでいる。

「それじゃあ僕らは帰りましょう」

「志摩!お前無茶すんじゃねーぞ?」

「はは、気を付けますわ」

「志摩くん、お大事にね」

「おおきに、杜山さん」

奥村先生や霧隠先生に続いてぞろぞろとみんなが病室を出て行く中、名前ちゃんだけは俺の手を握ったままそばを離れない。

「名前?行くわよ」

「出雲ちゃん…う、ん…」

俺に視線を向けては口ごもる名前ちゃんに出雲ちゃんが声を掛ける。
それに諦めて立ち上がった彼女が俺の手を離そうとするが俺はその手をぎゅっと繋ぎとめた。

「廉造くん…?」

「出雲ちゃん、堪忍…少し名前ちゃんと話させてや…」

驚いた表情を浮かべる名前ちゃんの手を握ったまま少しだけ身体を起こして出雲ちゃんに視線を向けてはっきりと告げる。
すると出雲ちゃんはため息を吐いて「名前に何かしたら許さないわよ」と一言だけ告げて部屋を後にした。


君の手を離したくなくて


このままなんて嫌なんだ…
お願いだから
君の気持ちを聞かせて…―


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君の瞳に映るのは
僕だけであってほしい…―

そう伝えたら君は、
どう思う…?




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