「りな、さっきの怪我見せて」 「え?怪我?」 「ほらここ」 エイトが指摘したのは私の膝下あたりの軽い傷だった。 「これくらいいいよ!」 「だめだよ。ホイミ」 「……ありがと。よく気づいたねエイト」 エイトはこういうことが多いと思う。 私が気づかないようなこと、隠していることにもすぐ気がつく。 お城で勤めてたって言ってたし、細やかな心遣いはその名残……とか? 「って思うんだよね、ゼシカ聞いてる?」 「え?ええ。エイトの心遣いの話ね」 「うん。エイトっていっつもほんと鋭い」 「え……」 私の言葉にゼシカは苦笑いで言葉を続けた。 「エイトってどっちかっていうと鈍いほうじゃないのかしら」 「鈍い!?でも靴紐緩んでるのとか教えてくれるし」 「……エイトはよく見てるわね、りなのこと」 「そうなのかな?」 「りなもエイトのこと結構見てるわよね?」 「無意識にね」 やっぱり戦闘中はエイトが中心だし、普通に歩いてるときもエイト上着がひらひらしてるのとか、バンダナが風で少しだけなびくのとか、なんとなく眺めてることはある。 「ゼシカ、どうしたのそんな顔して」 「無意識って……もう……りなとエイトは」 ゼシカの短い溜息にまたどうしたのと問いても、なんでもないのよと返されるだけだった。 END [←] | [→] 目次 TOP |