【701-710】

とあるラブ・ロマンスの倒錯

見習い天使と愛を紡ぐ

恋路の闇に溶けてしまった黒小袖

麗らかな昼下がりに君と情死

永久に果てぬマリッジ・ブルー

行きは酔い良い 帰りは怖い酒宴の夜

下克上、失敗につき

物好きが秋の扇を拾う

がらくた、落書き、罵詈雑言 千年後には芸術だ

ついぞ現世は荒れ模様 せめて来世は多幸を祈らん


【711-720】

君よ、隔離世の居心地はどうだい?

例えば全て忘れてしまっても、出逢えば必ず再び君に惹かれるだろう

紙一重の偶然と必然 広く括れば同類

砕けた硝子をもう一度溶かして、固めて

僕の激情は明け方の白にも決して劣らない

結局、最後まで駆け抜けて行く心には追い付けないまま

見上げた蒼は、あの頃よりもずっと狭い

その透明な鼓動に惚れたのだ

選択肢は、とうに水底へ沈没してしまったよ

嗚呼、本望だ という如何にもな台詞


【721-730】

宿命と運命と偶然と必然の差異

余りにも稚拙な色仕掛けだと嗤う

信念は主義に勝る

拝啓、ラ・トラヴィアータへ

陽気な狩人は何時でも躊躇しない

恋心に角砂糖を三つ

此の御時世、純潔の巫女なんて何処にも居やしないのだ

朝っぱらから弾けた理性 君のせい

何もかも忘れ踊り狂うのも、また一興

口実は「月が綺麗な夜だから」


【731-740】

意味知らず高鳴る胸に惑い顔

エンディングを迎えるには、些か気が早いかと

私の舌にとっては少々苦い

告別式は出来るだけ蕭やかに

どうしようもなく、娘は還りたがっていた

青嵐に浚われてゆく故人の名

どうせ泣き濡れるのは三日三晩だけ

夢か現か 枯れ尾花に掻き消えた

天の色移らふに等しく、

情事を誘う眦の薄紅梅


【741-750】

闇夜に紛れ消えたインディゴの哀切

空木の花は褪せて尚も美しい

潮垂る袖も風吹きゃ乾く

ああ、手折られた杜若のなんと憐れな事か

紺瑠璃が映し出す僕の滑稽

いずれ流転する内に見えなくなってしまうなら

宵に啼くは黄金の鶏

マシンガンぶら下げた童女が手招き

紫苑の花弁ひらり舞い落ちて

それは庇護欲と呼ぶには随分と意地汚い感情



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