【651-660】

体温に溶けるメープルシュガー

緩やかに穏やかに、されど留まらぬ墜落

泪で水彩絵の具延ばして

真夏の木洩れ日は鮮烈な黄色

首筋を透明滴る様が酷く甘美で扇情的な光景でしたので

熱に浮かされ混ざり合って そして一つになりたい

夜明け前、密やかに眺める横顔の愛しさよ

沸騰すれば蓋をしていても吹き零れるのが道理

地に堕ちたならば、いっそ蹴飛ばしてしまえ

君に耽溺する 有り触れた午前二時


【661-670】

色恋なんて呆気無くも一瞬で終わるもの

プロローグはなるべく短く纏めた方が良い

筋書き通りじゃ面白くないから(アドリブ多目で、何卒宜しく)

破り捨てたシナリオに未練は無いけれど、

無論、役者不足は承知の上です

何だかんだで王道の大団円が一番

分からないまま愛したって然して支障は生じない

どうか教えて欲しいと強請る唇に噛み付いた

誘う純情に贖う純潔

白い指先も千切れりゃ紅くなる


【671-680】

水面に乱反射する艶笑

八月の陽光は紛う事無きサディストである

彼女手製のストロベリージャムはカロリーオフ仕様

僕ら単なる共犯者(其所に甘美な意味合いが含まれる余地は微塵も無く、)

灰燼に塗れても唯一つ、怖い位に煌いている

渇いても、何時までも見失いたくはなかった

うんと背伸びして夕陽にキスを

断末魔で愛を推し量ろう なんて、愚かな

擦れ違い、行き違い、挙げ句の果てには交わらない

渋い飴玉を好むのは恐らく君だけ


【681-690】

一夜だけでも添い遂げられたら、

例えば、自重に耐えられず首が落ちたとして

暁に残り香を持て余す

独りの閨はこの上無く寒々しい

まだ、君の姿が忘却の向こうに透けている気がした

かつての愛を嘯く冷徹にさえも(魅せられているとは、とても言えない)

応える者は此処には居ない 何処にも居ない

くるり、巡り巡って不幸が幸福

愛しているのは君ではなく、君との恋

柔らかな夢幻に抱かれ溺死


【691-700】

縄張り侵す愚鈍な阿呆に今こそ鉄槌を

無意味に責め立てるは女の特権

無意味に攻め立てるは男の特権

だから、お前は底で永遠に燻っていろ

生温い微風じゃ物足りない

熱帯夜を言い訳に使う

さあ、ここぞとばかりに ほざけ戯言

死因は糖度過剰の口説き文句

無傷で愛し合う事なんて現実には不可能だ

君を生き返らせる為なら、肺だって心臓だって何だって捧げるのに



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