もうすぐだ。
もうすぐ…
眠りのしっぽをつかみかけていた時、不意に晶馬の頬に温かなものが触れた。
今日、冠葉は家を空けていた。
きっと女のところだろう、まったくだめな兄貴だね、と零しながらひまりと二人で夕飯をとった。
どうして、
なぜかはわからない。
あんなに女の子にモテで、引く手数多な冠葉はなぜか時々こうして晶馬に触れてくる。
小さな頃は手を握り合って眠っていた。
でも今はもういい年で、そんなことしなくても眠れるはずなのに
どうして?
冠葉に直接きいたことはない。
理由は本人にもわかっていないんじゃないだろうか
触れてくる手には戸惑いが含まれていて
ひどく柔らかく触れてくる。
まるで壊れ物に触るように。
そんな風に触れなくたって、壊れないのに
ねぇ、
双子だからといって、何から何までわかりあえるはずもない。
冠葉の考えてることも、殆どわからない
それでも、それでもこの血のつながりが何か特別なものだと信じたい自分もいる
のしかかってくる眠気をおいやるように重い瞼を開ける。
「冠葉…」
部屋はすでに暗く、冠葉の表情は見えなかった。
離れていく手をひきとめる。
その手に小さく唇をつけて、晶馬は冠葉の背中に腕をまわした。
大丈夫だよ、と言い聞かせるようにきつく抱きしめる
落ちるなら二人一緒だ
どこまでだっていい
おわりなんて、なくてもいい
二人ならいいよ