それは、繰り返し見る夢
霞がかった夢の中、苹果は一人ひた走る
何を求めているのか、なぜ走っているかもわからない
ただ走らなければ、という思いだけが胸にある
そしてやがて、どこかにたどり着く
メルヘンと、近未来が融合したような場所に
そこで、自分の声を聞く
(絶対的な愛を追いかけてた頃はこんな不安感じたことがなかった)
(彼の一挙一動に心は揺れて)
(本気の恋はこんなに脆い)
確かに何かを言っているのだが、内容は定かではなく
かろうじて喋っているということだけがわかる
そして目前に淡い光が出現し、苹果は触れようと手を伸ばす
・・・決まってそこで、目が覚める。
退院して少し経ってからこの夢を見るようになった。
えもいわれぬ感情の高まりに戸惑い、苹果は毎回泣いてしまう。
原因不明の火傷すら、苹果を柔らかく包み込む。
「もう、なんなのよぉ…」
形ばかりの悪態をついて、子どものように泣きじゃくる。
溢れてとまらないこの愛しさはどこからくるの?
何かに、誰かに、伝えたいのに。
いくつもの時が過ぎても、そこが遥かでも
いつか、会いにいくから。
また、夢で。