そうですね、私が中学生の頃だからもう2年くらい前になるのかな?
高倉くん、あっ弟さんの方です。

クラスが一緒だったんですけど、あまり話したことはありませんでした。
一応互いに同じクラスだということは認識していて、挨拶を交わす程度の、本当に知人の他人、そんな感じでした。



それは落日が怖いくらい美しい日でした。
二人で掃除当番のごみを捨てに焼却炉に行ったんです。

私が「空凄いね」と何気なく声をかけると彼は「そうだね」と言って二人で少しの間空を見ていました。
その時ふと彼を見ると、なんていうんでしょう…どこかが痛いような、切ないような、どこか達観したようなあ、諦めたような…上手く表現できないのですが、
そんなものが透けた表情をしていて
私は彼が「行こうか」と声をかけてくれるまで話しかけることができませんでした。


それがいつもとは全然違ったから…落日の美しさもあいまって記憶していたのかもしれません。
忘れてはいなかったんですが、彼とクラスが分かれてそのまま卒業したのでそのことは次第と薄れていきました。



そしてつい最近、見かけたんです。高倉くんを。

あの日も掃除当番の日と同じくらい落日が赤かった。

双子のお兄さんと女の子を挟むようにして3人で歩いていました。
たぶんあの感じからして妹さんだと思います。

彼らはそれぞれスーパーの袋を手に持って歩いていました。
断片的に聞こえてきたのは夕飯のことでしたね。

どうやら高倉くんたちが夕飯についてあれやこれや言い合ってたみたいで、妹さんはそれを笑ってたしなめているような感じでした。

ああ、兄妹仲がいいんだな、と思ったんですが、なぜかそう思ったのと同時にどこか違和感を覚えたんです。

自分でも何でそんなことを思ったのかわからないんですが…







彼らの表情はこちらからは丁度逆光で見えませんでした。


でも私はそんな彼らがなんだか別の世界にいってしまいそうに感じて

私の勝手な憶測ではあるんですけど、落日に燃えてしまいそうな危うさを覚えて、鼻の奥につんとした痛みを感じたのでした。




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