AtoZort | ナノ

04.呪われた少女


今日も俺は大陸へ遊びにきていた。
器がないから、下の人間には見えないけど。
大通りに並んだ露店の一つからりんごを拝借し、道をあるく。
へー、新しい店が出来たのか。
あれ、ここの店つぶれてる。
この前の猫じゃないか。
そんなことを思いながら。

ただ、そんな独り言を拾ってくれるやつはいなかった。



「アゾート、今日も下界へ行ったのね」
帰るなり母さんに捕まった。
大きな「黒い」目が俺を睨む。
「好奇心が旺盛なのはいいことだと思うわ。だけどね、あまり人間に干渉しないで。」
腰に手を当て俺を叱った。

「ねえさま」

そのとき横で声がした。
「ああ、アリシア…」
「ねえさま、遊びましょう?」
頭の上の大きなリボンを揺らし、うさぎのぬいぐるみを抱きしめながらニコッと笑った。
「母さんだって、人間に干渉してるじゃないか」
アリシアの相手をして、もう俺を睨んでいない母さんに向かって僕は言った。
「アゾート、」
「自分だけ、ずるい。おばあ様が言ってた。アゾートは人間が大好きだって。人間の味方をしなくちゃいけない神なんだって。」
「…おばあ様は、考え方が変わっているのよ。」
目を伏せてばつの悪そうな顔で答える母さん。右手でずっとアリシアの頭を撫でていた。
「ずるい。ずるい、ずるいずるい!母さんだけ、ずるい!」
「アゾート!」
走った。
とにかく、母さんから離れたかった。
俺の後ろ姿を、ずっと緑色の目が見つめていた。


「ああ、あいつはね…。でもさ、あいつも君を心配しているんだよ。分かってやって…。な?」
ザック、母さんのお兄さん、つまり俺の叔父さんのところに、気づくと来ていた。
叔父さんにさっきのことを全部話した。
「でも、母さんは大陸の人間のことかくまってるし……。」
「それは確かに理不尽って気がするよね。でも、あの子は特別な子だろう?」
「それは……。」
「あの子もまた呪われてるんだ。……アゾートが呪いだっていうことじゃないけどね。」
「いい。赤いのは呪いだって思ってるから。」
ザックおじさんはぽんぽんと背中をたたいてくれた。
でもまだ虫の居所が悪い俺は、ザックおじさんがそばから離れても、ずっとそこにいた。

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