03.双子
楽園、と呼ばれるそこには、俺ら神と、それからここに残った人間しかいない。
ここにいる者は皆、永遠の命を手に入れられる。
すなわち、死ぬことができない。
俺はそれだけが不服だと思った。
「やぁアゾート。ちゃんと仕事してるか?」
「…してるよ。デリアこそ、さぼってるんじゃないの」
話しかけてきたのはデリア。
暖を司る神。
夏になって暑くなるのはこいつのせい。
「いいんだよあたしはー。」
「今夏でしょ、働きなよ」
「平気だよちょっとくらい!」
あははははと馬鹿笑いして僕の背中を叩く。
こいつは、俺の…なんて言えばいいんだろう?
俺の、おばあ様の親友。
「それに今はルーナの時間だからな」
とっても歳の差はあるが、ここ、楽園では一定の歳をとるともう歳をとらない。
だから、デリアは俺より容姿が幼い。
「そうですか」
「そうですかって、お前が時間流してるんだろぉ?把握しとけよ!」
「…はいはい。」
はっきり言って、俺はこいつが苦手だ。
「デリー!またアゾートいじめてるの!?」
背後から声が聞こえた。
そこには、
「イヴ!」
がいた。
デリアの双子の片割れ、イヴエラルだ。
「何してるんだよー。お前今は夜風吹かせなきゃいけないんじゃないのか?」
「馬鹿!もう夜明けだよ!君の番だから呼びにきたの!」
「まじかよ!アゾート、何で言わなかったんだよ!」
「いや、だから遊んでていいのかなーとは思ったんだけど。」
「言えよ!」
バシッと、今度は頭を叩かれた。
「じゃあなアゾート!夜になったら覚悟しとけよ!」
そう叫びならデリアは走っていった。
「もう、デリはぁ…。ごめんね、アゾート君。いつもデリが迷惑かけて。」
「いや、…まぁ…。」
「後でちゃんと僕が叱っておくからね。」
そう言ったイヴの顔は、笑っていたが、笑っていなかった。
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